去る10月20日(日)、小中学生のプログラミングスクール「TENTO」主催の「第二回プレゼン大会」が、筑波大学 東京キャンパスの大講堂にて催されました。

前回に 引き続き、今回もTENTOの生徒の皆さん(「TENTOメイト」といいます)の力作が勢揃い。今回は、プレゼン大会の模様を通じて、私なりに捉えたTENTOさんが取り組んでいる教育の特徴…「指導体制」「生徒同士が教え合う」そして「凄いプログラマを育てるのではない」の3点について、取り上げてみようと思います。

IMG_9246

TENTOそのものについては、前回のブログで紹介しいていますので、あわせてご覧ください。

※お子さんの写真は許可を得て掲載しております

■「一人一人違ってもよい」指導体制

小中学校で受ける教育は、多くの場合「先生のシナリオに沿って」授業が進められます。言い換えれば、教える内容は基本として1本道です。そこでは、授業について行くか、脱落するか、それとも興味自体を持たないかの、どれかになります。

IMG_8789

一 方で、TENTOは真逆を行きます。プログラミングを教える目的こそはっきりしていますが、何を教えるかは特に決まっていません。自分で書き上げたいソフトウェアのテーマを探し出し、いわゆるTA(Teaching Assistant)の支援を受けながら、コーディング技術を自ら積極的に獲得して行きます。そのため、人によって取り組むプログラミング言語はまちまち、進捗もバラバラ、そして作り上げる成果物の種類(ゲーム・ソーシャルネットワーク・プレゼンテーション)も違うものです。

現在、プログラミングを小中学校で習う事は極めて稀です。そうすると、プログラミングの動機は、生まれてから今までの人生経験…遊び・発見・人付き合い等から導き出される事になります。そうすると、人と違うのは「当然」の結果です。一人一人違ってもよい、その多様性を受け止められる指導体制(※1)と、自分は自分であってよい(※2)安心感が、プログラミングをより楽しくする環境を作り出しているのかもしれません。

そして、前回よりもレベルアップした彼らを見ている事が、おっさんとなった自分にとって嬉しいひとときでもあったりします。一人一人の、プログラミングスキル、プレゼンテーションスキル、そして精神的な成長を見届けるというのは、本当に素晴らしいものです。

■生徒同士が教え合う

TENTOメイトの皆さんは、横のつながりが強いのです。それも、学年の壁無く。

IMG_9036

少年野球等のスポーツ系のクラブですと、体育会系の性格上どうしても上下関係ができます。また、学校内では授業中に積極的な横のつながりを用いた学びの場というのはそれほどありません。しかし、TENTOはプログラミングと言う共通の課題を通じて、互いに教え合う環境があります。僕が知る限り、学校の場でこのような機会は少ないのではないかと思います。

そうすることで、刺激し合いながら互いに知識を高め合うことができるばかりか、一人にならない…仲間がいることでより続けやすい環境があるのではないかと、思います。どんな事であれ、仲間がいる事ほど生きていて心強い事はありません。

■凄いプログラマを育てるのではない

IMG_8416

プログラミング教育の話題でしばし出てくるのが、「凄腕」…世界の頂点に立つプログラマを養成するというテーマです。確かに、そのような逸材を育てれば明日の日本が明るいのではないか、と考えるのもわかります。一方で、多くは凄腕ではないプログラマがソフトウェア開発の世界を支えており、同時にプログラムを書かない業務担当者や企画担当者の存在がソフトウェアを開発する動機を作っています。

私は現在30代ですが、彼ら・彼女らと同じ年齢の頃にコンピュータに触れられた人は今と比べれば少ない状況でした。その中で、ソフトウェアの書き方を誰かから教わる機会を持った人は、さらに少ないと思います。

TENTOメイトの子の全員が、プログラマを初めとしたソフトウェア技術者になる訳では無いと思います。一方で、ソフトウェアと仕事・私生活は切っても切れない状況はさらに強まるはずです。そうしたときに、ソフトウェア開発に関するリテラシを持った状態で大人になれば、よりコンピュータ・ソフトウェアを活用して世の中に価値を還元してくれる人たちになってもらえるのではと期待しています。

少なくとも、ソフトウェアの事をまるっきり知らずに、ソフトウェア技術者に対して無理な要求・矛盾した説明をする人は少なくなるのではと考えています。

■おわりに

ここまで、私なりに捉えたTENTOさんの3つの特徴…「指導体制」「生徒同士が教え合う」そして「凄いプログラマを育てるのではない」についてお話ししてきました。私塾だからできる、学校教育ではなかなかできない一人一人の価値を高める教育を施されている点に注目しています。

ソフトウェア開発の現場は、他の業種・業界と違いまだまだ歴史が浅い事から、ソフトウェア開発の状況をなかなか理解してもらいづらい状況があります。この状況はすぐには解決できませんが、TENTOさんのように若い人たちにソフトウェア開発の知識を養う場を通じてリテラシがあがる事で、ソフトウェア開発の環境全体を徐々に状況を改善する事ができれば良いなと私は希望を持っています。

IMG_8930

前回に引き続き、今回もお手伝いをさせていただく機会を頂戴し、誠にありがとうございました。また機会がありましたら、お手伝いさせていただけたら幸いです。竹林さんを初めとした先生方のご活躍と、TENTOメイトの皆さんの更なる成長をお祈りします。

■追伸

イベントを主催されたTENTOさん、そして審査員を務められた阿部先生・久野先生が執筆・翻訳されている本をご紹介します。ぜひご覧ください。

※1: TA一人につき3〜5名程度ついているようです

※2: TAの方から、事情があって学校から足が遠のいている子がTENTOだと通えたり、学校の勉強が好きではない子もTENTOでプログラミングをしていると目が輝いている子がいる、というのを伺っています。