寝台特急 はやぶさで東京へ戻ってみた

寝台特急 はやぶさで東京へ戻ってみた

僕は、かつて福岡への行き帰りに…
・飛行機
→東京〜福岡 1.5時間前後(季節によって前後) 1万〜3.3万(大手の普通席正規運賃)
・新幹線
→東京〜福岡 5時間強 2.2万円(普通車)くらい 通して乗ったことはありません
・高速バス
→東京〜福岡 14時間以上 1.5万円 名古屋まで経験済み
・自分の車
→東京〜福岡 14時間以上 2.2万円(普通車)+ガソリン代 高速は割引を使おう
と、4種類の交通機関を利用してきました。

そして、最後に残ったのが「寝台特急」。それは、またの名をブルートレインと呼ばれる夜行列車です。
30年ほど前は遠距離移動の主力として活躍していましたが、現在は新幹線・飛行機・夜行バスに押され、列車の絶滅危惧種(?)としてその存続が危ぶまれています。
これは、今乗らないと一生乗れないのでは、そして飛行機はこの時期正規料金で高い!ということで時間がたっぷり取れるお盆に乗ってみる事にしました。

しかし、このチケットを取るのが大変!
予約開始日はB寝台ソロ・A寝台個室それぞれ満席で、仕方なく開放型B寝台上段という過ごしづらいポジションをとりあえず取っていました。しかし、その後「みどりの窓口」に立ち寄ったところ、A寝台個室に空きが出てあわよくば個室で旅をすることができるようになりました。
B寝台はきっぷ含め片道2.3万円ですが、A寝台個室は7千円アップです。幸い、きっぷは福山の出張がてらこちらに来ていることもあってきっぷは往復で取れていたため、きっぷのみ1割安く済みました。

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博多駅 九州新幹線全通に向けて工事中
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寝台特急 はやぶさは3番のりばから

天神で用事を済ませ、8月13日の17時ごろに博多駅に入ります。
高校時代は博多駅近辺(今、甲子園に出ている学校です)にいたので、見慣れた光景と思いきや九州新幹線全通に向けて工事をしています。もう数年したらだいぶ雰囲気が変わるのでしょう。

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883系 ソニック 以前はもっと派手派手だった
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鹿児島本線の主力通勤電車 813系 真っ赤

列車が来るまで、博多駅のホームで出発待ちをしている電車に目を向けてみることに。
って言っても、これまた見慣れた電車ばかり。それでも、東京と違って個性あふれる電車が一杯います。「旅するデザイン」という本が詳しいのでおすすめ。車両をデザインした水戸岡さん直々監修の本ですよ。

さて、そうしているうちに列車がやってまいりました。

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17:37 はやぶさ東京行き いよいよ到着 待っている人のほとんどは花火大会臨待ち

博多駅からどどっと乗ってくる人が増えるみたいです。さすが九州の中心、集客力があります。
さあ、約16時間20分の旅が始まります。

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多々良川の上です さいなら福岡
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最後尾から 遠賀川の上だと思う

新幹線では1時間経たず、飛行機ならものの数分で通過する福岡。そこを1時間以上かけてのんびりとおさらばします。うーん、これぞスローライフ。

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今日はA寝台 個室です 電子ロックつき
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N700系にも負けないコンセントつき

A寝台は小倉で全室埋まり、B寝台もソロは満室、開放型もほぼ満席です。
長時間の移動となる寝台特急だとセキュリティがちょっと心配。それに、携帯/ノートPCのバッテリーも上がること間違いありません。そこを電子ロックと個別のコンセントを備えてフォローしているA寝台には、+7,000円の価値があると思います。ビジネスホテル代と考えても、いいかもしれません。

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A寝台個室「シングルDX」
セキュリティとプライバシーはOK
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しかし、
狭いことより古いことが印象強いです

で大分から来る富士と連結し、12両編成になり、機関車も交換します。
この日は関門海峡花火大会があったため、朝のラッシュ並みに電車が混雑。臨時電車も出ているようです。その影響で、門司を7分遅れで出発。
発進するときの衝撃が、電車とは比べ物にならないくらい大きいのが気になりますね。

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門司駅で富士の連結待ち ホームに出て見物
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今日は関門海峡花火大会で大混雑

さらに、関門海峡をくぐって下関で供給電力が交流から直流に変わるため、さらに機関車を交換します。
門司も下関も、記念写真や撮り鉄、そして観光とみんな見物してるんですね。

ちょっとここで車内探検。
20:00前、個室は慌しく出入りする人がいますね。って、自分もそうか。しかし、扉の先は何もわかりません。
開放B寝台の車両に入りますと、皆さん色々なスタイルで過ごされているのがよくわかります。本を読んでいる人、家族でトランプをしている所、ボケーっと車窓を眺めている人。まとまった時間があるから、寝台と言う広々とした移動空間があるから、できることなのかもしれませんね。
僕は、ノートPCを広げて撮った写真を整理してました。A寝台は静かで作業がはかどりますよ。AirH”もコンスタントにつながることも、実は特筆に価するかもしれません。無線LANのアクセスポイントなんかなくても、いいわけですから。

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開放型B寝台 ここ以外一杯でした
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下関でさらに機関車を繋ぎ換え

本州に入りますと、外はもう真っ暗。天神のデパ地下で買った弁当を食べます。結構うまいんだこれが。
ちなみに、車内販売は浜松までありません!だから晩飯・夜食・飲み物はしっかり買い込んでおかれることをお勧めします。ただ、飲み物は2リットルもいらなかったかもしれない(苦笑)。

21時を過ぎるとアナウンスは一時休止、そして減灯です。列車ですから、いい感じで眠くなってきます。
眠くなった、そのときにベッドがあるというのはすごぶるいいですよ。新幹線だと、グリーン車であってもイスで寝るのです。浴衣に着替えて、布団をかぶれることがどれほど楽なことか。
ただ、1つだけ見てみたいものがあったので、23時過ぎに一旦起き上がります。

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デパ地下弁当で腹ごしらえ
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新幹線で約1.5時間 寝台特急で6.5時間

0時ごろ、遅れは取り戻せない状況ながら福山に到着です。
昨年、2ヶ月ほどいたこと、そして4日前もいたこの土地。ちょっと見慣れた光景を寝台特急から眺めています。さすがに東京と違って、0時ともなると、乗ろうとしているわずかな人以外、誰もいません。

この光景を見終わったあと、再び布団の中へ。
姫路あたりで少し目が覚めたのですが、運転停車をしていたようです。その後、新快速が走る線路の上を粛々と、そして中国地方にいる時よりも速度を上げて東へひた走ります。どうも新快速が走る区間は、高速運転のために線路の路盤をしっかりさせているのでしょうか、速度の割に揺れなかった記憶があります。

その後の記憶は朝まで無いので、爆睡していたのでしょう。
寝台特急ならではの、布団をかぶりながらの移動です。

朝6時過ぎ、アナウンスが再開。眠いっての、そして普段こんな時間に起きない(普段は7:30起床)っての…。病院並みの早寝早起きだよ?、マジ勘弁。
と思っていたら、車窓に浜名湖が見えてきました。天気は思わしくないですが、こういう目覚め方は寝台特急ならではです。
また、遅れも取り戻せた模様。

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朝起きたら浜名湖の目の前を通過中
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富士山もよく見えますよ

途中、富士山ももちろん見えます。
そうそう、ご存知の方が少ないのでひとつネタを。富士山は、電車の山側からばかりではなく『海側』からも見えるポイントがあります。焼津?富士の間で、海側の窓から富士山を見ようとしてみてください、見える場所がありますよ!特に海沿いを走っているところが重点ポイント。新幹線でも見えないことは無いのですが、一瞬にして通り過ぎてしまうので余裕を持って見られません。この車窓をのんびり眺める「余裕」も、在来線で行動することのメリットのひとつですね。

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反対側からも富士山が…
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顔を洗って降りる準備

A寝台は洗面台もあります。共同の流しまで行く必要が無いんですね。ちょっと便利かなと思ったけど、コンセントほどのインパクトは無いかな。本当はシャワーを浴びたいんだけど、残念ながらこの列車にはついていないようだし。
ただ、高速バスと違って、この段階で疲れを感じることはほぼありません。さすが布団効果。

その後、身支度をして2度寝体制に(笑)。眠いんだって、本当に。布団がそこにあったら寝ちゃうでしょうもん。
そうしているうちに、横浜へ。いよいよ到着間近です。

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東京駅に到着 いつもの風景です
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みなさんありがとうございました

博多駅を前日の17:37に立ち、9:58にいよいよ東京駅に到着です。
新幹線や飛行機と違って、「ああ、福岡ってやっぱり1,000Km離れてたんだな」と感じる、そして列車に「ありがとう!」と言いたくなる、そんな旅でした。
新幹線や、飛行機で、こういう気持ちになることは、恐らく無いでしょう。

さて、はじめにも書きましたが、寝台特急は国内の鉄道の中にあって絶滅危惧種に入る種別です。
でも、東京駅に降り立った皆さんの表情を見ると、結構いい表情の方が多いのです。不人気ではあるけれども、実は満足度が高い旅のチョイスなのでしょうか。僕が感じるに、寝台特急は
移動時間を単なる移動時間にせず 旅の一部にしてしまう力がある
のです。

では、寝台特急に再び光を当てるにはどうすればよいか。ちょっと自分なりに考えて見ます。
まず、客層は「時間がある人」か「あえて選ぶ人」、そして「お金がしっかり出せる人」になります。そうすると、すぐに思い浮かぶのは「団塊の世代」。そして、ある程度お金はある(溜まっている)けど時間に追われている、平均年収以上の収入を得ている30代前後の人。あと、ぐずっても安心して乗せていられる子供連れの一家。かな?

そして、肝心な車両。
■今のままでやるには
少なくても、存在とそのよさから伝えることになりそう。N700系のときみたいにブログプロモーションでもしますか!
■ちょっと何とかするには
少なくてもあのおんぼろな部屋(特に開放型B寝台)・壊れかかった設備(共同トイレ/流しが特にひどい)はリフォームした方がいいでしょう。
■現状を最大限活かすには
個室を選択したがる人は少なくありませんので、個室寝台+ラウンジは増やすべきです。また、シャワー室も。
できることなら、東京?札幌を走る「北斗星」並にすれば、寝台特急に人が帰ってくるかもしれません。
■抜本的に改善するには
JR九州のプライドをかけて、水戸岡さん監修の新型車両を導入!
東京駅に、この車両が入線すると、そこだけ博多駅の状態(?)になるくらいに(笑)。
もちろん、1人用・グループ用の個室・シャワーも完備。さらに、ラウンジや食堂車もあると、面白いと思いますよ。深夜のバータイムは焼酎を楽しみながらすごせると尚OK。僕は、ずーっと飲んでる気がするけどね?。
カシオペア並みに、満室続きになればいいですね。

どの案も、採算的に大変そうですね。
でも、北海道に引けをとらないか、それ以上に観光地がある九州に、北海道以上の設備を誇る寝台特急が入っても、いいじゃないですか。
新幹線や飛行機の普及で忘れてしまった旅の楽しさを、また教えてくれる貴重な存在なのですから。

飛行機の正規運賃より安ければ、積極的に選ぼうと思ってますよ、僕は。
ダッシュで山手線に駆け込むように新幹線に乗る日々とはまた違った、ゆっくり時間・車窓の流れるあの環境は、次の力を充電できる貴重なひとときなのです。

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お盆の東京 暑っついんだこれが!

さーてと、明日からまた仕事かい。

■参考リンク
flickr – koemu sets:寝台特急はやぶさ (他に撮った写真を一部アップ中)

※2008/08/31 更新
写真をflickrにアップしたものへ差し替えました。また、flickrのsetsへのリンクを張っています。今年度一杯で引退するはやぶさのことについて、写真を通してさらに理解を深めていただけたら幸いです。

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9 のコメント

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てっちゃんママ

早速のお返事ありがとうございます。
やはり、そうなんですね。ずいぶんと息子が危機を訴えるもんですから、
乗ることができなかったら、あまりにもかわいそうかな。と思いまして、
お聞きしてよかったです。
A寝台は、息子の希望なんです。
しかし、悩むところです。
受験があるので、どうしたものかと。

親身に回答してくださいましてありがとうございました。

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こえむ

てっちゃんママさん>
鉄道専門誌の情報によると、来年のダイヤ改正までは走るのでは、という話です。この話が本当なら、卒業旅行の時期にはおそらく間に合いません。
ですので、確実に走っているであろう今年中(夏休みなど…受験で大変かもしれませんが)に乗車されるほうが無難ではないかと、考えています。
もし、寝台特急の『趣』を味わうならB寝台のほうがいいですよ。僕がA寝台を選んだもうひとつの理由は、仕事の都合上ノートPCを使う必要があったためです。

最後に切符ですが、繁忙期でなければ、乗車1ヶ月前(=発売日)にみどりの窓口や旅行代理店で手配すれば取れると聞いています。ただ、繁忙期は一瞬で売り切れますので、並ぶ以前に運が必要かもしれません。
切符は親御さんがとられてもいいと思いますが、ご子息が直接取られるのはどうでしょうか。自分自身で切符を手にすると、旅への感慨も変わるはずです!(僕は小学生のころから自分で切符を手配して旅行していました)
あと、B寝台でしたらネットで空席照会もできますよ。
■JR Cyber Station
http://www.jr.cyberstation.ne.jp/

ご参考になれば幸いです。

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てっちゃんママ

はじめまして
息子(新中3)が鉄道好きです。
来年卒業を記念して、<はやぶさ>に一人旅に行かせてほしいと言っております。
寝台特急が廃止されていくなか、いずれ<はやぶさ>もその運命となるのではなかと危惧している息子ですが、来年春まではまだ大丈夫でしょうか?
A寝台を希望しているようですが、どのような手順でやれば確実に切符が手に入りますでしょうか?

親ばかながら、希望する一人旅に出させてやりたいと思っております。

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将人の父

早速のお返事と御気遣いありがとうございます。
本日、何気なく<はやぶさ>で検索していたところ、
同じ日の乗車録が載っていましたので、興味深く読ませていたところに
見た事のある姿が二つ。偶然としか言いようの無いものです。
たまたま8月13日に<はやぶさ>に乗り、本日何気に検索した<はやぶさ>に。メ?ルアドレスは別途送らさせていただきますので、デ?タを
送って頂いてよろしいでしょうか?

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こえむ

将人の父さん>
コメントありがとうございます。
何かドラマのようです。「実はですね、」とコメントをいただけるなんて。あわせて御礼いたします。
ご家族皆様で乗車されていたのですね。私も家族で何度も旅行をしたことがありますが、こういう思い出は20代を過ぎると改めていいものになるのだなと最近感じています。

あと、もしよろしければ原寸の写真データをお送りしたいと思います。右側の「メール送信フォーム」からご連絡いただけたら幸いです。

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将人の父

今回初めてコメントをさせていただきます。
門司にて写っている2人の子ども、実はウチの子です。
昨年、9年ぶりに母方の実家へ行ったのですが、その帰路でのものです。
門司での長い停車時間をもてあまし、車内にいる家内と次男坊と
ガラス越しにはしゃいでいるところです。
なにげない1枚の写真ですが、当方にとっては思い出の1枚です。

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こえむ

totokoさん>
どうもありがとうございます(^-^)
旅って楽しいですよね。
また遊びに来てください♪

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totoko

すてきな旅日記
面白かったです☆
私もはやぶさに乗ってみたいなって思ってます。

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