GSSMのオープンキャンパスで体験談をお話しました

今日は、春まで通っていた筑波大学の社会人大学院「ビジネス科学研究科 経営システム科学専攻」(GSSM)のオープンキャンパスに、OBとして体験談を話しに行きました。この日(当日の模様:『オープンキャンパスが開催されました | 筑波大学ビジネス科学研究科』)の事を、様子、私がお話しした事、そして付け加えたい事の3点についてお伝えしたいと思います。

GSSMは、他の大学院と違って、特定の分野に絞られていません。大きく分けて3つの分野…「経営学」「Operations Research」そして「情報・計算機科学」の先生が集まる、珍しい環境です。言い換えれば、多種多様な分野の学習をサポートできる環境にあると言えます。特定の分野に絞ってもよし、また学際として分野をまたぐこともできる大学院です。また、筑波大学ですが、東京都文京区にあり、都内で働いていても通いやすい場所にあります。

※ここで書いた事を全て実践したからと言って、合格できるとは限りません。その点、ご了承ください。

※本記事内の意見は、筑波大学を代表するものではなく、私 一個人のものです。

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■様子: すごい熱気!

オープンキャンパスのメイン会場として使った134号室という大講堂があるのですが、なんとここが満席!予備のイスまで出ていました。社会人大学院への関心ってやっぱり高いんですね。

隣では博士後期課程のオープンキャンパスが行われていたのですが、そっちはどうだったのでしょうか?私の先輩もOBとして参加していたようですが、反応を聞くとそれなりにいらしていたのかなと思っております。

■お話: (予定)一言話す → (現実)パネルディスカッション

この日の在校生・修了生コーナーでは3名が出まして、修了生が2人(僕を含む)、在校生が1人の構成でした。あまり流れが良くなかった?それは参った…けど、弁明させてください(笑)。僕は「一言話す」予定で来ました。しかし、流れで「パネルディスカッション」もどきの状況となったのです(汗)。

さて、パネルディスカッション中の質疑応答で、大きく分けてこんな内容のお話をしました。

  1. GSSMとその他のビジネススクールとの違い
  2. 研究計画書の書き方
  3. 試験への備え
  4. 会社との折り合いの付け方
  5. 講義の出席
  6. 講義の内容
  7. 指導教授選択
  8. きつかったこと
  9. 修了した後の話

1は、GSSMではケースメソッド形式の講義はほとんどありません。基礎科目こそ座学が多いのですが、その後はゼミや演習形式の講義がほとんどです。また、講義は主に修士論文を書く時のための知識をつけることに主眼がおかれていて、直ちに仕事等に活用できるスキルを学ぶのではない事もお伝えしました。

2は、僕からは「今、仕事で直面している課題・新しい発見」について絞って記述するといいかも、とお話ししました。広く一般の課題で探してもいいのですが、それだとストレートであがる大学院生とあまり変わりありません。仕事で直面する課題から導けるのが、社会人大学院を目指す人のアドバンテージです。また、これは個別にお話ししたのですが、手段と目的を取り違えないよう気をつけると良いかと思います。例えば、ID付きPOSデータを用いてマーケット分析をしたいと考えてしまうと、それはそもそも何のためにやるのか?が抜けてしまいます。ID付きPOSデータを使うのは、単なる手段なのです。ここ、気をつけないと行けません。

3は、特に面接の話がありましたが、僕はほとんど備えはありませんでしたし、記憶にもありません(当時の記事「飛び級で叶えるビジネススクールへの道 – 研究計画書から本番まで」にも記憶がないと書いてありました…)。とはいえ、社会人なら最低限の面接マナーは習得されているはずですし、一生懸命書いた研究計画書の事なら頭にあるでしょうから、変に気張らなければ大丈夫なのではないでしょうか。

4は、上司はもちろん、同僚にも理解を得る事がとても大切です。家族がいる方は、もちろん家族に対してもです。周囲の協力があっての通学だと思ってください。僕は、受験する前から上司や周囲に大学院への通学の事を話していました。また、通学中に転職したのですが、その先でも何とか理解を得ながら通学をする事ができました。

5は、うちはあまりうるさくは言われません。ただ、社会人大学院だと自腹を切って来ている訳ですから、来ない事が自分にとって不利益になります。ですので、どちらかというと先生たちからは学生に対して自己管理を適切に行うよう求められていると思ってください。

6は、1にも重なります。特に、最近流行の「ビッグデータ」的な研究をやりたいのであれば、コンピュータ関連の基礎科目をきちんと受けておく事をお勧めします。その後のデータマイニング系の講義で、少しは楽になれるはずです。また、社会人大学院に来る人は多種多様なバックグラウンドを持っている人が集まります。お互いに助け合いながら課題をクリア(※1)すると、尚良いのではないでしょうか。私もそうしていました。

7は、指導教授の先生を選択するまで、3ヶ月ほど時間があります。ここで、人となりを知り、そして直接訪問してお話をしてみてください。その中で、自分にしっくり来る先生に指導を受ければ良いのではないでしょうか。

8は、一番きつかったのは修士論文執筆です。体力、精神、両方に来ます。

9は、「情報をサーベイする力」「モデリングする力」そして「論理的にまとめる力」がついたと思っています。この力はどの職業でも、 そして長い間自分を支えてくれる物になると信じています。先ほども書きましたが、仕事で直ちに使えるスキルが獲得できる訳ではありませんので、そこを期待 しない方が良いです。

なお、上記の話のほとんどのことは、「筑波大学 社会人大学院(GSSM)を無事修了しました」の記事中でより詳しく書いています。あわせてご覧ください。

■付け加えたい事

研究、学生生活、そしてのお金の事の3点について、付け加えます。

先ず研究ですが、新規性などの研究としての重要性を気にされている方がいました。もちろん適切にカバーされていればよいのですが、これがきちんとできれいれば修士ではなくて博士のほうに行く方法もあります。そもそも、それができないから学ぶんですよね、という事です。まずは、研究計画書を書く段階では「努力」してみる所からでいいのではと、私は思います。私も、最初からできていた訳ではありません。

続いて、学生生活。まー、勉強もいいんですけど、飲みに行ったり、イベントをやったり、あれこれ楽しむ機会がたくさんあるので、ぜひ楽しんでください(笑)。自分が普段いるドメインと全く違う人と、同じ目的に向かって進む経験は、社会人大学院にでもいない限りなかなか経験できるものではありません。

最後に、大切なお金の事です。筑波大学は国立大学ですので、入学料・授業料は2年で130万円くらいです。私立だとこれの3倍はかかるかもしれません。自腹を切って行く人(私もそうでした)は、その点は充分留意してください。会社からお金が出る人は、会社から出る事に満足せず、いい意味でも悪い意味でも会社に足元を見られている点は忘れないでください。

■がんばれ受験生!

ここまで、オープンキャンパスの様子、質疑応答のこと、そして私から付け加えたい事の3点をお話ししました。

まあ、色々書きましたが、最後に一言。GSSMで学んだ結果として、何も準備がなくてもパネルディスカッションやその後の個別質疑応答ができるくらいの力がつく。それが一番の見物だったんじゃないかと、僕は思っております!!!

受験生の皆さん、がんばってください!そして、受験生が増えるといいなぁ… 🙂

※1 答え丸写しでクリアできるような課題はほとんど出ません。

■参考記事

筑波大学 社会人大学院(GSSM)を無事修了しました

2013年、この春に社会人大学院である筑波大学 大学院 ビジネス科学研究科 経営システム科学専攻(GSSM)を修了し、修士(経営システム科学)の学位を取得しました。2010年から始めた「修士号 飛び級の道」、ここにゴールを迎えました。

簡単ですが、私なりのGSSMのお話…いわゆる体験記を、「GSSM ≠ 教わる場所」「2年間の流れ」そして「研究プロセスそのものが学び」の3点にまとめて書きたいと思います。

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GSSM ≠ 教わる場所

GSSMは、教わりに行く場所ではなく、自ら学びを深める場所です。

MBAをはじめとする多くの社会人大学院・ビジネススクールは、「スキルを教える」ことを押している所が多いのでは思います。しかし、GSSMは違います。カリキュラムの形態は通常の大学院に近いものがあります。教わるための講義もしっかりありますが、それ以上に論文を書く事を通じて自ら学ぶ場所なのです。

MBAというと「ケーススタディ」という一種のシミュレーションを通じた「訓練」を行うことが多いはずです。しかし、GSSMは違います。目の前に存在する課題に対し、多くの知見を自分で噛み砕きながら、分析・実験を通じて新しい姿をモデリングする過程を体得して行く場所です。

MBAの一部の大学では、ストレート…社会人経験がない学生さんがいる所もあります。しかし、GSSMは違います。社会人経験を積み、一定の結果を上げた各分野の腕利きのビジネスマンが集まり、研鑽を行う場所です。

もし、GSSMをリカレントエデュケーション(社会人ための再教育)の場として考えていらっしゃるようでしたら、「教わるのではなく学びに行く」ことを踏まえて検討していただけると嬉しいです。

2年間の流れ

GSSMは、自分の仕事やプライベートのペースに合わせて、カリキュラムを組み立てる事ができます。ただ、私を含め、次のパターンで取り組む方が多いかなと思います。注意点がありまして、2013年度から筑波大学は2学期制になったので、組み方が少し変わっている可能性があります。ご了承ください。

講義 研究
M1 4月 入学
M1 1学期 基礎科目中心の講義を受ける。 先生の人となりを知る。
M1 1学期末 単位の 2/5 を取る。 配属研究室 決定。 (希望はだいたい通ります)
M1 2学期 専門科目中心の講義を受ける。 研究テーマを考え始める or 論文のサーベイ(洗い出し)を始める
M1 2学期末 単位の 4/5 を取る。 ゼミ等がどんどん入り、研究モードにシフトし始める。
M1 3学期 専門科目、気合いがある人は博士の輪講科目に混ざって講義を受ける。 少しずつ研究計画が明らかになって行く。
M1 3学期末 だいたい単位を取り終える。 研究概要発表。M2で取り組む研究の計画がだいたい固まる。
M2 1学期 M1の頃に受けたくても受けられなかった講義を受ける。 論文のサーベイ・データ分析・実験実施などなど バシバシやる。
M2 2学期 (2年で修了を諦める人が出てきて、少しさみしい話をしたりする。) 中間発表。研究の進捗をまとめ、修士論文の執筆に備える。
M2 3学期 (講義を受ける余裕なんてない。) 修士論文執筆。死にものぐるいでやる。有休を取ったり、会社の勤務時間をずらす人もいる。
M2 最後 (みんなで思い出を語り始める。) 修士論文提出。学会発表に取り組む人もいる。そして、修了!

スケジュール、かなり濃密です。仕事とよく両立できたな…いや…同僚や上司の理解あってのことです…という状況です。研究を2年でまとめるのは、かなり短い時間です。GSSMに入って取り組む内容を決める時は、所属した研究室の指導教授とよく相談して、自分の研究のスコープをしっかりと絞って取り組むことが大切です。

研究のプロセスそのものが学び

GSSMの醍醐味は、研究に取り組める事です。そして、研究プロセスそのものが学びにつながります。僕なりに、研究を通じて得た物は何かを5つ挙げてみます。

  1. 先行事例を「調べる」癖と技術がついた
  2. 物事を論理的にまとめて編集するスキルがついた
  3. 自分や他人の研究に対して論理的な視点で批判的に見る癖がついた(クリティカルシンキングに通じる)
  4. 研究者仲間と出会う事ができた
  5. 研究という道を知る事ができた

1は、今まで自分や他人が「常識」と思っていた事が、学術論文のサーベイやデータを取る事を通じて「どうやらそうでもなさそうだ」と知る事ができます。そして、常識で止まっていた自分の知見を越え、新しい知見を自分から見いだす事ができるようになります。しかし、そのためには「どこに」「どのような」情報があり、それを「どのように」探すかを訓練しないとうまく行きません。そこは、指導教授からやり方を盗んだり、教わったりするのです。

2は、これは修士論文を書く事そのものが訓練になります。執筆中は指導教授にずいぶんとダメ出しを食らって悔しい思いをするのですが(笑)、それは多くの人が「自分の知見を他人に説明するスキル」を養うことを普段してこなかったからです。修士論文を書く前後で、文体が変わる人も少なくありません。

3は、「否定する=相手の道を塞ぐ」ことではなく、「批判する=問題点を指摘する・代案を提案する」力がつくのです。1や2のプロセスを通じて、自分や相手が考え切れていない視点を発見し、より良い方向に持って行く力がつきます。これは、ビジネスのシーンでもすぐに使えそうなスキルですよね。

4は、同じ志を持つ研究者仲間と出会えた事です。これは、自分の研究を深める事をより大きく後押ししてくれました。これは、僕が指導教授としてお世話になった久野先生のご縁も大きかったと思います。最近は「あれっ、斎藤さん、博士課程に行かないの?」なんて冗談を言われるようになりました(笑)。

5は、ビジネスの世界にいると、どうしても仕事で結果を出そうと考えがちです。そんな中、GSSMでの学びを通じて研究という「究めて新しい知見を世に広める」取組みを行う…それも楽しい分野がある事を知りました。これを知って、博士課程に進んだクラスメイトが何人かいます。

スキルを獲得することに重きを置いた教育もよいでしょう。ただ、今のビジネスに自分を最適化するのと、自分から新しい分野を開拓している事のどちらが楽しいかと聞かれたら、僕は後者です。

大学院を修了して

大学院の2年間を使って書き上げた修士論文が、つくばリポジトリ(筑波大学公式論文DB)にアップされています。よろしかったらご覧ください。128ページありますので、心して…どうぞ。

ここまで、「GSSM ≠ 教わる場所」「2年間の流れ」そして「研究プロセスそのものが学び」の3点についてお話ししてきました。GSSMで学んだ事はすぐに使えるスキルを積極的に学ぶ内容ではなかったので、直ちに成果が出ている感触はありません。いや、ひょっとしたら、学んだ成果は、自分では気づいていないほどに自然に活かせているのかもしれません。それは、人が僕に下す評価を聞いていると感じます。そして、今後10年、20年を通じて、徐々に学びを通じて獲得した力が生きてくるのではないかと考えています。その時、初めて学んだ事が活きていると自分で実感できるのかもしれません。

また、2年で修了できたクラスメイトは、30数人中、18人でした。例年、6〜7割程度だそうで、残りは遅れて修了するか、脱落するかです。遅れて修了するのは決して恥ずかしい事ではなく、仕事やプライベートのバランスを取った結果がそうだっただけなのです。とはいえ、2年で終える事は非常に大変なのにはかわりありません。

クラスメイトの取材記事もご覧ください

クラスメイトが、社会人大学院に関する情報誌・Web記事の取材を受けていまして、その記事が掲載されています。みなさん、有名企業の前線で活躍している敏腕ビジネスマンです。ぜひご覧ください!

また、お近くに修了生の方がいらっしゃいましたら、あわせてお話を伺ってみてください。人それぞれの「目的」を持って通っていらっしゃる事が、わかるかと思います。

最後に

僕はこの10年、学歴にコンプレックスを持ちながら生きてきました。ただ、ちゃんとした国立大学の研究型 社会人大学院に入る事ができた後は、「なんだこんなもんか」と徐々にその気持ちも薄れました。そして、今は晴れ晴れした気分で、毎日を過ごしています。

そして、僕が大学院に飛び級して修士号を獲得できたのは、勤めている会社の同僚・上司の理解あってこそでした。こうして僕に大切な機会を与えてくれた皆さんに、深く感謝します。どうもありがとうございました。また、この話が、リカレントエデュケーションに興味を持つ人たちの参考になれば、幸いです。

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第54回 プログラミング・シンポジウムで発表してきました

2013年1月11日〜13日に、「プログラミング・シンポジウム」(略してプロシン)にて参加+発表してきました。プロシンは、1960年から始まった、プログラミング技術等に関して議論を行う場です。実際、「プログラミング」をキーワードにして、プログラミングに興味を持つ100名もの老若男女が Extreme な雰囲気でじっくりと意見を交換していました!

■発表報告

今回の一番の目的は発表。「コミュニケーションスキルを重視したソフトウェア技術者教育手法の研究」と題して、3日目の朝イチのセッション7-2で発表しました。

この研究の流れは、「(動機)ソフトウェア技術者、特に新人では、コミュニケーションが苦手な人がいるよね。」→「(目的)仕事を始める前の段階でコミュニケーションを含めたソフトウェア技術者の教育って出来ないかな?」→「(目標)その上で、新人がいち早く現場に入る事が出来ればいいよね。」となっています。

さて、大切なので発表中も2回言った事があります。「ソフトウェア開発におけるコミュニケーションとは何か」 — IT系の方であれば、「コミュニケーション」という言葉にアレルギーがある方がいらっしゃるはず。私も好きな言葉ではありませんでした。でも、開発にはコミュニケーションが必要なのは否定できません。そこで、この研究では次の通りに定義しました。

ソフトウェア開発に必要な「コミュニケーション」は
成果物をもとにインタラクションを行うこと

≠とっても分かりやすく聞こえる話
≠リア充(合コン・笑いを引き出せる話)
≠ゴマすり(ええこと言っちゃう!)

その上で、どのようなことをやってきたのか…スライドをご覧いただけたらと思います。

予稿(論文)は「久野先生(指導教授)のページ」や「情報学広場:情報処理学会電子図書館」にあがっていますので、あわせてご覧ください。

発表時間中、会場内IRC(チャット)や質疑応答で様々なご意見・議論・事例を交わす事ができました。その中で、いくつかピックアップしてコメントします。

  • コミュニケーションスキルの獲得をどう評価するか — 今の方法だと「ケースにロールを入れてコミュニケーションを積極的にさせる事で効果が高まる」事はわかるが、「コミュニケーションスキル」が獲得できているかは言い切れないのでは?
    →現在進めている、会話の分析を用いて示す事が出来ればと考えています。
  • 「事前教育」もさることながら「失敗した経験」がスキルを育てるのでは。
    →「失敗した経験」はとても大切だと思います。それ以上に、「事前教育」はその効果をより早く出す事ができると示せたのではと評価しています。
  • 全員素人なのはどうか。せめて1人は経験者が必要では?PJを見通せる人がいないと方向感を失いかねない。
    →おっしゃられる通りです。企業でやる場合は、その方法でぜひ進めたいです。ただ、今回は「学生」に対してですので、また違った解決手法を導き出せたらと思います。
    ※新人ばかりで数ヶ月かけてPBL研修を行う会社の事例紹介もいただきました。
  • ケースを2回実施した方がよりスキルがしっかり獲得できるのでは
    →そうだと思います。次はより大きな規模で試し、示せたらと考えています。
    ※ただ、私は学校の先生ではないので、容易に実験環境を設けられないのが悩ましいです…

以上より、研究成果の発表はさることながら、プロシンの目的である「多方面の人々の共通の討論の場であり、意見交換の場である。」ことに沿う事ができ、とても嬉しかったです。

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(Photo by @earth2001y — Thanks !)

皆様、どうもありがとうございました。いただいたお話を修士論文に反映させ、完成度を上げていきます。

■プロシン初参加の感想

プロシンは「プログラミング」に関する議論の場です。ただ、「プログラミング」と一言で言っても、「スポーツ」と同じくらい範囲が広いものだと考えています。スポーツならサッカー・野球・テニスなどがあるように、プログラミングにも組み込み・Web・HPC・VMなど、共通点が「プログラミング」しかないんじゃないかと思えるくらい、広いものです。

でも、ここにいらしている全ての人が、全ての人の話に興味を持ち、全ての人の話に意見を持って議論していました。議論はセッション中に留まらず、移動中、食事中、そして夜通し(Extremeプロシンだなんて言われてましたがwww)、行われたのでした。それも、目を輝かせて議論を交わすのです。少なくとも、違う分野だからと決めつけてそっぽを向く人等、誰一人いません。僕は様々な現場技術者の勉強会や学会に足を運んできましたが、ここまでアツい場に出会えた事は、そうありませんでした。

「好き」であり続ける事は、難しいものです。その上で「探求」し続けることまでやっている。結果に厳しく、一方で楽しくやっている皆さんの話を聞いていて、もっと探求を深めたいと強く思いました。会話を交わしていると、自分の探求の深さの程度が、言葉尻一つ一つに出る事を痛感しました。

そういう緊張感、大切にしていきたいですね。

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お会いした全ての皆様、スポンサーのドリコムさん(夜のお酒を提供いただいたそうです)、そして3日にわたる大きなイベントを運営してくださった幹事・係の皆様、どうもありがとうございました。また、来年も多くの方とお話しできたら幸いです。

「新社会人に対する情報教育」に関する実験協力のお願い

■要旨

私、斎藤 祐一郎(以下、私)は、筑波大学 大学院 ビジネス科学研究科 経営システム科学専攻 博士前期課程(以下、大学院)において、情報教育、特にソフトウェア技術者の新人教育に関する研究(以下、本研究)を行っております。

研究を遂行するにあたり、私が作成した情報教育に関する教育プランが従来の教育方法よりも成果があがるものであるかどうかを実験が必要となっております。その際に、企業で日々業務にあたられている社員様や、特に皆様のもとで研究に励まれている学生さんにご協力願えたらと考えております。

■私について

私は社会人ではありますが、大学院において経営と計算機科学を学びながら、久野 靖 教授のもとで情報教育の研究を行っております。

普段は、株式会社ハートビーツにて、インターネットサービスを支えるサーバ・ネットワークインフラの構築・運用に携わっております。(以下、現職)。以前は、株式のテクニカル分析、地域ポータルサイト、及びARアプリケーションの開発に携わるプログラマをしておりました。

■研究について

本研究のタイトルは「人間関係を重視したコンピュータ技術者教育手法」であります。

まず、現在のシステム開発がアジャイルやContexual Designを初めとした顧客・チームメンバーそれぞれの人間関係を理解し積極的な会話を通じてインタラクティブに行うことが主流となっております。しかし、多くのソフトウェア技術者は会話が苦手であり、開発時に有為なコミュニケーションを行えず、結果としてシステム開発の結果が顧客に評価されづらい状況が出ております。

そこで、新人社員の頃からインタラクティブな開発に馴染みやすい素養をつけるべく、これまでの「座学」だけの教育だけではなく、ケーススタディやペア・プログラミングを通じた教育を行おうとするものです。

■実施内容

社員様・学生さんには、プログラミング、またはサーバ構築に関するケーススタディまたはワークショップを行っていただきます。1つのケーススタディあたり1日2〜3時間を1週間程度、ワークショップは1回6時間程度を予定しており、どちらかを最低2回実施致します。

募集する社員様・学生さんは、計算機科学の基礎(例えばC言語で関数・ポインタの理解が進んでいる水準)を学んだことが前提(大学生であれば3年生または4年生)でして、人数は1校3名以上を希望しております。可能であれば、2チームに分けて比較実験を行いたい事から、6名以上集まっていただけますと大変助かります。

■スケジュール

社員様・学生さんの時間が確保しやすい夏休みに合わせて実施したいと考えております。そのため、7月から9月の間に実施日を設定致します。

研究にあたり、次の段階で学生さんのデータを取得致します。

  • 実施前 — 当初のスキルの確認(アンケート) およびチーム割り時のバランス確認
  • 実験 1回目終了後 — 到達度の確認(技術に関するテスト・アンケート・インタビュー)
  • 実験 2回目終了後 — 到達度の確認(技術に関するテスト・アンケート・インタビュー)

お伺いする際、私自身は平日は業務がありますが、勤務先には大学院での学習時間として平日において数時間の研究活動が認められており、かつ土休日は自分自身で制御可能な時間がございます。その中で、先生と学生さんとお話させていただく事になります。

メールについては、業務に携わっていない時間にご連絡可能です。

研究結果は、12月末までに修士論文として仕上げます。あわせて、情報処理学会をはじめとした学会の研究会での発表を行う予定です。

■参加時のメリット

学生さんには、実際に職業としてコンピュータ技術者に就いた際のイメージを知るきっかけになるのではと考えております。これは、自分のためだけではない、誰かのためにプログラムを書き上げる楽しさを知ることができることになります。その上で、就職活動やインターン活動でお役立ていただけるものと期待しております。

また、企業様においては、新人教育のご協力を差し上げられるものと期待しております。

■謝礼等

大変申し訳ございませんが、金銭を伴った謝礼は行う事が出来ません。ご了承ください。

尚、論文への謝辞の記載を行います。

■連絡先

趣旨にご賛同いただける場合、以下にご連絡いただけましたら幸いです。また、より詳しい内容をお知りになりたい方も、ぜひお問い合わせください。研究計画等、ご用意しております。

氏名: 斎藤 祐一郎
所属: 筑波大学 大学院 ビジネス科学研究科 経営システム科学専攻
メールアドレス: saitou [アットマーク] gssm.otsuka.tsukuba.ac.jp (大学院宛)

募集は、2012年7月一杯まで行います。

何卒、ご協力賜りたく、よろしくお願い致します。

論文でやっては行けない5つの事…M2を迎えて

筑波大学の社会人大学院での生活も、無事2年目を迎える事が出来ました。修了に必要な単位は何とか取り切りましたので、後は修士論文のための研究に力を注ぐのみです。

さて、修士論文というのは修士号を取るためには避けては通れない道でして、あと1年以内に普段書き慣れていない学術論文を認めなければなりません。そのため、多くの修士課程・博士前期課程の人は担当いただいている指導教授からあれこれ指導が入っているはずです。僕もその一人です。

■学生の論文は指導教授と一体である

書く以上は学術的にも価値が高いものを書きたいわけです。そこで、情報処理学会をはじめとした学術系の研究会に足を運び、他の方の論文と発表を見に行くようにしています。いわゆる敵陣視察、ですね。この中には、「なるほど!」と伝わる素晴らしい論文から「えっ?」と思う不思議な論文まで、いろいろあります。

さて、企業の研究所や大学教授の方が書かれる論文とともに発表されるのが、私のように修士課程・博士課程にいる学生さんの研究発表です。発表を聞いていて感じたのが、どうやら学生さんの発表には指導教授の指導状況も同時に見られているということです。いい発表であれば「さすが○○先生の学生は素晴らしい」となりますし、逆に問題があると「あの人の指導教授は誰だ?」となります。

自分がきちんと恥ずかしくない研究をやらなければ、自分ばかりでなくお世話になった指導教授の体面も汚してしまうかもしれないのです。これは大変な事だと気づきました。

■僕が見た「これはやってはいけない」研究発表

M2で行う研究活動に対する自分への喝入れをこめて、研究発表で「これはやってはいけない」と感じたことをまとめてみます。以下は僕は情報系の人である事を前提においていただき、他分野だとひょっとしたら違う事もあるかもしれないことを念頭に置いてください。また、研究の専門家から見たら他にもポイントがあるかと思いますが、社会人大学院生の観点と言う事でお読みいただけましたら幸いです。

1. リサーチクエスチョンの範囲が広すぎる

これは社会人大学院生に多く見受けられるパターンです。私も含めて、です。仕事は幅広く事に当たり、問題を逐次解決して行く事が少なくありません。しかし、研究は違います。自分の研究成果を論理的な裏付けを持って発表するには、分野を絞る必要があります。広すぎると、どのような研究を行ったのか専門家にさえも伝えづらい状況が出ます。ましてや、自分自身の実験のためのデータを集める際の時間が足らなくなります。自分が設定したリサーチクエスチョンとは?本当に追求したい事は何なのか、何故追求したいのか、そして何を価値提供できるのか、充分検討する必要があります。

2. 既に研究された分野について発表している

学術論文を書く際に必ず行う作業として「サーベイ」があります。論文や文献をあたり、既存研究の調査を行い、自分が行う研究に役立てたり、逆に批判を行えるよう理論武装する事もあります。しかし、サーベイが足りませんと他の誰かと同じ研究をしてしまう恐れがあります。これでは、研究に大切な先見性が失われてしまい、研究成果が意味をなさないものとなります。

また、学会の研究会に足を運ぶ人たちの多くは、研究の専門家です。大抵、自分自身と近い分野の論文や文献をサーベイしていて、過去から現在にかけてどのような研究の歴史があり、今のトレンドを把握されています。そういう人たちに「なるほど」と思わせるのは、なかなか一筋縄では行かない事がわかります。

3. サーベイした論文との差別化がうまく出来ていない

2番に近いのですが、これはサーベイしている前提での話です。既存研究よりも「私は新しい事を発表している!」と言う場合、どのように差別化しているのかを説明しなければなりません。その際に、うまく説明できずもったいないものもありました。これは、恐らく元々設定していたリサーチクエスチョンが弱いのではと僕は見ています。リサーチクエスチョンが強ければ、研究成果として押し出すものがもっと明確に出来たはずだからです。

4. スライドのページ当たりの行数が多い

こちらは研究の質ではなく発表の話です。どれほど優れた研究成果も、適切に説明できなければ価値をうまく伝える事は出来ません。ここから、発表も大切な研究活動である事がわかります。

さて、私が指導教授から随分と指摘されたのが、発表スライドの作り方です。スライドは、1枚1〜2分程度(発表時間による)、1スライド当たり7行程度に抑えて作成しなさい、と言うのがその内容でした。「えっ、これまで削るの!?」と思うくらい、削ります。社会人ですとスライドを作り慣れている方もいらっしゃるはずですが、学術系はまた違うのです。お世話になっている別の先生からも「斎藤さん、学術系の”マーケット”に沿って作るってのも、大切ですよ。」と言われ、なるほどとぐうの音も出ませんでした。

作成したスライドは最近行われた学内の中間発表で使いまして、聞きにきていた別の教授からは評判が良かったこともあり(その先生は厳しい事で有名)、ホッとしました。

5. 論理的に間違っている

これはいくらなんでもないのでは?と考えた方がいるかもしれません。でも、あります。たまに。実験データの解釈の誤り、作成したプログラムのバグ、そして実験で採用した技術の選択を誤ったがために、研究成果の信憑性を担保する論理が崩壊してしまうのです。

まあここまで間違っていなかったとしても、そこまで言い切れるのかと考えられる程に詰め切れていない実験結果もあります。自分の研究内容から少し外れるなら「ここは対象外」と言えばいいでしょうし、逆にどこを追求したのか明確にしないと、論理的な側面で研究成果を評価していただけないはずです。

■指導をちゃんと受けよう

ここまで書いて、自分自身、よくよく指導教授と話を絶やさずに指導を受け、研究を進めなければならないと痛感しています。また、このように書いた事も、指導教授から「君、ここの詰めが甘い。」や「もうちょっとこうするとうまく行く。」など、直々に話を聞きませんとわからない事が多々あります。よくある How To 等と違い、この記事を読んで書ける程、簡単ではありません。

また、どのように研究成果を認めるかは、研究分野もさることながら、指導教授の流儀も入ってくるものです。ですから「○○教授は××教授のお弟子さんだ」という、まるで子弟関係に注目する会話を聞く事も珍しくありません。そういう縁は修了後もずっとついてくるわけですから、自分自身の論文で恥ずかしい事は出来ません。

情報系、特に自然言語処理に関する研究で、実際の研究室の風景を切り取ったようなブログがあります。「観月橋日記 (旧 生駒日記)」です。まさに研究中の学生さんはぜひ読んでみてください。何か、気づきをもらえるはずです。僕は、このブログを読みながら、自分の胸に手を当てるのであります…。

■よし!あと1年

研究活動には、まずは適切なリサーチクエスチョンの設定、そしてたゆまぬ論文サーベイというところ、なのでしょう。その上で、いい成果が出たら論文発表に至る事が出来ると理解しています。

僕は、これからいよいよ実験に取り組んで行きます。そのための下準備も必要ですし、実験には協力者も必要になります。ですから、簡単に行きそうにはありません。ただ、データが出た以上は面白いものになると、僕はワクワクしているのです。

もし、僕を研究会でお見かけいただいた際は、どうぞお手柔らかにお願い致します。