筑波大学 社会人大学院(GSSM)を無事修了しました

2013年、この春に社会人大学院である筑波大学 大学院 ビジネス科学研究科 経営システム科学専攻(GSSM)を修了し、修士(経営システム科学)の学位を取得しました。2010年から始めた「修士号 飛び級の道」、ここにゴールを迎えました。

簡単ですが、私なりのGSSMのお話…いわゆる体験記を、「GSSM ≠ 教わる場所」「2年間の流れ」そして「研究プロセスそのものが学び」の3点にまとめて書きたいと思います。

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GSSM ≠ 教わる場所

GSSMは、教わりに行く場所ではなく、自ら学びを深める場所です。

MBAをはじめとする多くの社会人大学院・ビジネススクールは、「スキルを教える」ことを押している所が多いのでは思います。しかし、GSSMは違います。カリキュラムの形態は通常の大学院に近いものがあります。教わるための講義もしっかりありますが、それ以上に論文を書く事を通じて自ら学ぶ場所なのです。

MBAというと「ケーススタディ」という一種のシミュレーションを通じた「訓練」を行うことが多いはずです。しかし、GSSMは違います。目の前に存在する課題に対し、多くの知見を自分で噛み砕きながら、分析・実験を通じて新しい姿をモデリングする過程を体得して行く場所です。

MBAの一部の大学では、ストレート…社会人経験がない学生さんがいる所もあります。しかし、GSSMは違います。社会人経験を積み、一定の結果を上げた各分野の腕利きのビジネスマンが集まり、研鑽を行う場所です。

もし、GSSMをリカレントエデュケーション(社会人ための再教育)の場として考えていらっしゃるようでしたら、「教わるのではなく学びに行く」ことを踏まえて検討していただけると嬉しいです。

2年間の流れ

GSSMは、自分の仕事やプライベートのペースに合わせて、カリキュラムを組み立てる事ができます。ただ、私を含め、次のパターンで取り組む方が多いかなと思います。注意点がありまして、2013年度から筑波大学は2学期制になったので、組み方が少し変わっている可能性があります。ご了承ください。

講義 研究
M1 4月 入学
M1 1学期 基礎科目中心の講義を受ける。 先生の人となりを知る。
M1 1学期末 単位の 2/5 を取る。 配属研究室 決定。 (希望はだいたい通ります)
M1 2学期 専門科目中心の講義を受ける。 研究テーマを考え始める or 論文のサーベイ(洗い出し)を始める
M1 2学期末 単位の 4/5 を取る。 ゼミ等がどんどん入り、研究モードにシフトし始める。
M1 3学期 専門科目、気合いがある人は博士の輪講科目に混ざって講義を受ける。 少しずつ研究計画が明らかになって行く。
M1 3学期末 だいたい単位を取り終える。 研究概要発表。M2で取り組む研究の計画がだいたい固まる。
M2 1学期 M1の頃に受けたくても受けられなかった講義を受ける。 論文のサーベイ・データ分析・実験実施などなど バシバシやる。
M2 2学期 (2年で修了を諦める人が出てきて、少しさみしい話をしたりする。) 中間発表。研究の進捗をまとめ、修士論文の執筆に備える。
M2 3学期 (講義を受ける余裕なんてない。) 修士論文執筆。死にものぐるいでやる。有休を取ったり、会社の勤務時間をずらす人もいる。
M2 最後 (みんなで思い出を語り始める。) 修士論文提出。学会発表に取り組む人もいる。そして、修了!

スケジュール、かなり濃密です。仕事とよく両立できたな…いや…同僚や上司の理解あってのことです…という状況です。研究を2年でまとめるのは、かなり短い時間です。GSSMに入って取り組む内容を決める時は、所属した研究室の指導教授とよく相談して、自分の研究のスコープをしっかりと絞って取り組むことが大切です。

研究のプロセスそのものが学び

GSSMの醍醐味は、研究に取り組める事です。そして、研究プロセスそのものが学びにつながります。僕なりに、研究を通じて得た物は何かを5つ挙げてみます。

  1. 先行事例を「調べる」癖と技術がついた
  2. 物事を論理的にまとめて編集するスキルがついた
  3. 自分や他人の研究に対して論理的な視点で批判的に見る癖がついた(クリティカルシンキングに通じる)
  4. 研究者仲間と出会う事ができた
  5. 研究という道を知る事ができた

1は、今まで自分や他人が「常識」と思っていた事が、学術論文のサーベイやデータを取る事を通じて「どうやらそうでもなさそうだ」と知る事ができます。そして、常識で止まっていた自分の知見を越え、新しい知見を自分から見いだす事ができるようになります。しかし、そのためには「どこに」「どのような」情報があり、それを「どのように」探すかを訓練しないとうまく行きません。そこは、指導教授からやり方を盗んだり、教わったりするのです。

2は、これは修士論文を書く事そのものが訓練になります。執筆中は指導教授にずいぶんとダメ出しを食らって悔しい思いをするのですが(笑)、それは多くの人が「自分の知見を他人に説明するスキル」を養うことを普段してこなかったからです。修士論文を書く前後で、文体が変わる人も少なくありません。

3は、「否定する=相手の道を塞ぐ」ことではなく、「批判する=問題点を指摘する・代案を提案する」力がつくのです。1や2のプロセスを通じて、自分や相手が考え切れていない視点を発見し、より良い方向に持って行く力がつきます。これは、ビジネスのシーンでもすぐに使えそうなスキルですよね。

4は、同じ志を持つ研究者仲間と出会えた事です。これは、自分の研究を深める事をより大きく後押ししてくれました。これは、僕が指導教授としてお世話になった久野先生のご縁も大きかったと思います。最近は「あれっ、斎藤さん、博士課程に行かないの?」なんて冗談を言われるようになりました(笑)。

5は、ビジネスの世界にいると、どうしても仕事で結果を出そうと考えがちです。そんな中、GSSMでの学びを通じて研究という「究めて新しい知見を世に広める」取組みを行う…それも楽しい分野がある事を知りました。これを知って、博士課程に進んだクラスメイトが何人かいます。

スキルを獲得することに重きを置いた教育もよいでしょう。ただ、今のビジネスに自分を最適化するのと、自分から新しい分野を開拓している事のどちらが楽しいかと聞かれたら、僕は後者です。

大学院を修了して

大学院の2年間を使って書き上げた修士論文が、つくばリポジトリ(筑波大学公式論文DB)にアップされています。よろしかったらご覧ください。128ページありますので、心して…どうぞ。

ここまで、「GSSM ≠ 教わる場所」「2年間の流れ」そして「研究プロセスそのものが学び」の3点についてお話ししてきました。GSSMで学んだ事はすぐに使えるスキルを積極的に学ぶ内容ではなかったので、直ちに成果が出ている感触はありません。いや、ひょっとしたら、学んだ成果は、自分では気づいていないほどに自然に活かせているのかもしれません。それは、人が僕に下す評価を聞いていると感じます。そして、今後10年、20年を通じて、徐々に学びを通じて獲得した力が生きてくるのではないかと考えています。その時、初めて学んだ事が活きていると自分で実感できるのかもしれません。

また、2年で修了できたクラスメイトは、30数人中、18人でした。例年、6〜7割程度だそうで、残りは遅れて修了するか、脱落するかです。遅れて修了するのは決して恥ずかしい事ではなく、仕事やプライベートのバランスを取った結果がそうだっただけなのです。とはいえ、2年で終える事は非常に大変なのにはかわりありません。

クラスメイトの取材記事もご覧ください

クラスメイトが、社会人大学院に関する情報誌・Web記事の取材を受けていまして、その記事が掲載されています。みなさん、有名企業の前線で活躍している敏腕ビジネスマンです。ぜひご覧ください!

また、お近くに修了生の方がいらっしゃいましたら、あわせてお話を伺ってみてください。人それぞれの「目的」を持って通っていらっしゃる事が、わかるかと思います。

最後に

僕はこの10年、学歴にコンプレックスを持ちながら生きてきました。ただ、ちゃんとした国立大学の研究型 社会人大学院に入る事ができた後は、「なんだこんなもんか」と徐々にその気持ちも薄れました。そして、今は晴れ晴れした気分で、毎日を過ごしています。

そして、僕が大学院に飛び級して修士号を獲得できたのは、勤めている会社の同僚・上司の理解あってこそでした。こうして僕に大切な機会を与えてくれた皆さんに、深く感謝します。どうもありがとうございました。また、この話が、リカレントエデュケーションに興味を持つ人たちの参考になれば、幸いです。

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こえむ

ITインフラの構築・運用の自動化に携わるソフトウェア エンジニアです。 焼酎・ウィスキーなどの蒸留酒を好んで飲みます。 > より詳しく