去る3月31日、小・中学生が制作したプログラムの発表会「TENTO 第1回 プレゼン大会」が、筑波大学 東京キャンパスで催されました。これは、ピアノやダンスの発表会のように、日頃のお子さんの努力の成果を保護者の方・一般の方がご覧になられるイベントです。
※本記事内のお子さんの写真は、許可を得た上で掲載しております。
■TENTOって何?
TENTOとは、代表である草野さん(左)と竹林さん(右)が立ち上げられた、小・中学生のためのプログラミング教室の事です。
普段は主にさいたま新都心と新宿で開講されており、首都圏各地から小・中学生がプログラミングを学びにきています。私は、時々講義にお邪魔して生徒の皆さんと共にプログラムを書きながらプログラミングの楽しさをお伝えしたり、今回のようなイベント運営のお手伝いをしています。
■プログラミングは創造の手段
業務でソフトウェア開発をしていると、どうしてもテンションが下がる話に遭遇しがちです。かく言う私も、残念ながら例外ではありません。しかし、彼らの制作したソフトウェアを見ていると、プログラムを書くモティベーションがモリモリと沸いてきます。
発表者である彼らの「どうだ!」と言わんばかりのこの表情。教室で学んだプログラミングスキルを基に、自分たちで考えて制作したゲームやツール、そして物語を発表して行きます。せっかくですので、会の流れを説明します。
- 部門: 6部門あり、教育用言語「VISCUIT」「プログラミン」「Scratch」「ドリトル(※1)」と、業務でも使う言語を用いた「Webページ」「Webアプリケーション」があります。
- はじめに、各部門の代表者が、ライブコーディングしながら言語の特徴を説明します。
- 発表はLT(ライトニングトーク)形式です。1人5分の持ち時間で自分の作品を発表します。
小学生の子は主に教育用言語、小学6年生以上になってくると、HTMLやJavaScriptを用いてWebアプリケーションを作るようになります。
印象的なのが、ライブコーディングを通じた言語説明。大人でもやるのが大変な事を、小学生がよどみなくやるのです。保護者の方へプログラミングという「創造活動」の素晴らしさを生で伝える事ができ、かつ業務で開発に携わる僕らのような人間にとっても、刺激を受けざるを得ない強烈な印象を残す物でありました。
■小・中学生がプログラミングを学ぶ「希望」
プログラミングをしない人にとっては、プログラミングは難しい物であり、そしてプログラマは魔法使いと勘違いされる事さえあります。しかし、それを覆す、大切な発表がありました。
小学校3年生の彼女は、「TENTO君」というTENTOのオリジナルキャラクターを用いたアドベンチャーゲーム(AVG)を発表しています。開発言語はScratchです。そして、この作品は今回最優秀賞をとりました。ゲームを開発された事がある方ならわかるかと思いますが、ゲーム開発はプログラミングばかりでなく、リソース制作(絵等を作る作業)もかなり大変な作業です。彼女は、リソース制作に1ヶ月掛け、ようやくこのゲームを完成させたんだそうです。
内容は、小学校3年生の女の子らしさを感じる、かわいらしいゲームでした。今までなら、自分で絵本にしたり、作文にして発表していた事を、プログラミングという形で発表しているのです。そして、その発表はとてもインタラクティブで、かつ活き活きとしたエモーショナルなものでした。
僕は、彼女の発表に、ソフトウェア開発の未来の明るさを見た気がしました。単に道具としてコンピュータを扱い、ソフトウェアを開発するばかりでなく、まるで絵を描くように創造的かつ自然とプログラミングに関わる人が若い子から徐々に増えて行けば、ソフトウェア開発のより良い未来が広がって行くのではないかと期待しているのです。少なくとも、習字や英会話と同じように、一般的な習い事の一つとなってほしいのです。
尚、この記事では、彼女をピックアップしましたが、他の発表もとても活き活きとしたものばかりでした。審査員、そして僕の指導教員でもあった久野先生も、受賞者選択にだいぶ悩んだと言っていました。
■僕がTENTOのイベントを手伝う理由
僕は、いろいろなイベントの幹事団の一員に入る事が大好きです。混ざろうとする時に、大切にしている事が1つだけあります。それは「とにかく楽しそうにやっている。理由はよくわからないけど。」ということです。TENTO創業者の草野さん・竹林さんはソフトウェア開発の世界を変えたいという志を持っていらっしゃるのは当然なのですが、志が強いだけではないのです。研究室のゼミに、初見で飛び込まれてきてお話を伺った時、これは「楽しそう!」とすぐに思ったのでした。
僕は、そんな「楽しそう!」な人の輪の中で一つの目的に向かって盛り上げて行く事が、とっても好きです。
そうして、会社・学校・組織等の枠に囚われず。多くの人と関わることは、自分が何をすべきなのか考えを深め、より社会に価値を還元して行く、素晴らしいチャンスになります。
「野球にリトルリーグがあるように、プログラミングにも次代の人を育てる環境があってもいい。」その志に、今後も少しでも力になれたらと思っています。
ご足労いただいた保護者の皆様、聴講者の皆様、スタッフの皆様、どうもありがとうございました。そして、がんばって作品を完成させた生徒の皆さん、草野さん・竹林さん、イベントが成功してよかったですね!お楽しみ様でした!!
■参考資料
- TENTO – BLOG : 3月31日(日)、筑波大学でTENTOプレゼン大会を開催します!
- TENTO – BLOG : TENTO – BLOG : 最高のイベント! 3/31 TENTOプレゼン大会@筑波大学
- ニュース – 小中学生プログラマが自作アプリをプレゼン、「人を楽しませるソフトを作りたい」:ITpro
- TENTOプレゼン大会@筑波大学東京キャンパス – Togetter
※1: ドリトルは、私が所属していた筑波大学 久野研究室 OBである兼宗 進 教授(大阪電気通信大学)が開発しました