2013年1月11日〜13日に、「プログラミング・シンポジウム」(略してプロシン)にて参加+発表してきました。プロシンは、1960年から始まった、プログラミング技術等に関して議論を行う場です。実際、「プログラミング」をキーワードにして、プログラミングに興味を持つ100名もの老若男女が Extreme な雰囲気でじっくりと意見を交換していました!

■発表報告

今回の一番の目的は発表。「コミュニケーションスキルを重視したソフトウェア技術者教育手法の研究」と題して、3日目の朝イチのセッション7-2で発表しました。

この研究の流れは、「(動機)ソフトウェア技術者、特に新人では、コミュニケーションが苦手な人がいるよね。」→「(目的)仕事を始める前の段階でコミュニケーションを含めたソフトウェア技術者の教育って出来ないかな?」→「(目標)その上で、新人がいち早く現場に入る事が出来ればいいよね。」となっています。

さて、大切なので発表中も2回言った事があります。「ソフトウェア開発におけるコミュニケーションとは何か」 — IT系の方であれば、「コミュニケーション」という言葉にアレルギーがある方がいらっしゃるはず。私も好きな言葉ではありませんでした。でも、開発にはコミュニケーションが必要なのは否定できません。そこで、この研究では次の通りに定義しました。

ソフトウェア開発に必要な「コミュニケーション」は
成果物をもとにインタラクションを行うこと

≠とっても分かりやすく聞こえる話
≠リア充(合コン・笑いを引き出せる話)
≠ゴマすり(ええこと言っちゃう!)

その上で、どのようなことをやってきたのか…スライドをご覧いただけたらと思います。

予稿(論文)は「久野先生(指導教授)のページ」や「情報学広場:情報処理学会電子図書館」にあがっていますので、あわせてご覧ください。

発表時間中、会場内IRC(チャット)や質疑応答で様々なご意見・議論・事例を交わす事ができました。その中で、いくつかピックアップしてコメントします。

  • コミュニケーションスキルの獲得をどう評価するか — 今の方法だと「ケースにロールを入れてコミュニケーションを積極的にさせる事で効果が高まる」事はわかるが、「コミュニケーションスキル」が獲得できているかは言い切れないのでは?
    →現在進めている、会話の分析を用いて示す事が出来ればと考えています。
  • 「事前教育」もさることながら「失敗した経験」がスキルを育てるのでは。
    →「失敗した経験」はとても大切だと思います。それ以上に、「事前教育」はその効果をより早く出す事ができると示せたのではと評価しています。
  • 全員素人なのはどうか。せめて1人は経験者が必要では?PJを見通せる人がいないと方向感を失いかねない。
    →おっしゃられる通りです。企業でやる場合は、その方法でぜひ進めたいです。ただ、今回は「学生」に対してですので、また違った解決手法を導き出せたらと思います。
    ※新人ばかりで数ヶ月かけてPBL研修を行う会社の事例紹介もいただきました。
  • ケースを2回実施した方がよりスキルがしっかり獲得できるのでは
    →そうだと思います。次はより大きな規模で試し、示せたらと考えています。
    ※ただ、私は学校の先生ではないので、容易に実験環境を設けられないのが悩ましいです…

以上より、研究成果の発表はさることながら、プロシンの目的である「多方面の人々の共通の討論の場であり、意見交換の場である。」ことに沿う事ができ、とても嬉しかったです。

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(Photo by @earth2001y — Thanks !)

皆様、どうもありがとうございました。いただいたお話を修士論文に反映させ、完成度を上げていきます。

■プロシン初参加の感想

プロシンは「プログラミング」に関する議論の場です。ただ、「プログラミング」と一言で言っても、「スポーツ」と同じくらい範囲が広いものだと考えています。スポーツならサッカー・野球・テニスなどがあるように、プログラミングにも組み込み・Web・HPC・VMなど、共通点が「プログラミング」しかないんじゃないかと思えるくらい、広いものです。

でも、ここにいらしている全ての人が、全ての人の話に興味を持ち、全ての人の話に意見を持って議論していました。議論はセッション中に留まらず、移動中、食事中、そして夜通し(Extremeプロシンだなんて言われてましたがwww)、行われたのでした。それも、目を輝かせて議論を交わすのです。少なくとも、違う分野だからと決めつけてそっぽを向く人等、誰一人いません。僕は様々な現場技術者の勉強会や学会に足を運んできましたが、ここまでアツい場に出会えた事は、そうありませんでした。

「好き」であり続ける事は、難しいものです。その上で「探求」し続けることまでやっている。結果に厳しく、一方で楽しくやっている皆さんの話を聞いていて、もっと探求を深めたいと強く思いました。会話を交わしていると、自分の探求の深さの程度が、言葉尻一つ一つに出る事を痛感しました。

そういう緊張感、大切にしていきたいですね。

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お会いした全ての皆様、スポンサーのドリコムさん(夜のお酒を提供いただいたそうです)、そして3日にわたる大きなイベントを運営してくださった幹事・係の皆様、どうもありがとうございました。また、来年も多くの方とお話しできたら幸いです。