社会人大学院生活 M1 2学期突入

社会人大学院生活 M1 2学期突入

■モティベーションの源とは何か

ある日、元同僚と夕飯を食べに行った際の会話。

「学歴コンプレックスが無くなった今、何を原動力にするんですか?」

この10年、ずっと抱いていた学歴に対する負い目をずっと感じながら生きてきました。僕は東大卒の人間には実績で勝ってやる、情報系の学科を出ているのにプログラムが書けないなんてひどいもんだ、それくらいのことは毎日考えていました。そこまで言うのですから、誰よりも努力を惜しまず生き続けてきました。

同時に、学歴が無くてチャンスを取り逃している、という悔しさも抱いていました。大企業であればもっと専門性高くかつ高額報酬で生活できるのに、と。

そしてこの4月からの大学院。この悔しさを感じる必要が無くなりました。そんな中で、先の話は僕が抱えていた問題の核心を突いています。

■ところで大学院では何を学ぶのか

話を大学院に戻しましょう。社会人大学院、特にビジネススクールで学ぶことというと、多くの方はケースメソッドによるディスカッションというイメージを抱かれると思います。実際にビジネススクールへ通われた方なら、尚更です。しかし、筑波大学GSSMではあまりケースメソッドはやりません。

では、何をやるのかと言いますと、修論を書くことを通じて新しい領域を自ら開拓する力をつけて行きます。一般的な大学院では、これまで開拓されなかった研究分野を掘り下げ、論文を発表することを通じて新しい分野を切り開いて行くのが普通です。それとあまり変わりありません。更に、社会人であることを武器に職務経験も用いて研究テーマを導き出す点に特徴があります。講義は、研究を進める上での力をつける時間で、こなすことがゴールにはなりません。

えっ、これでは広く設けられている研究科と一緒ではないか!?と思われるでしょう。その感覚は間違っていません。多分、GSSMにケースメソッドを通じてビジネスに活用できる知識を獲得できることを期待すると、残念な結果になるでしょう。MBAの学位は取れますが、ね。

それよりも、今の仕事の中でより専門的な知識を必要としている、そして新しい分野を開拓する力をつけて行きたい、と願う人にとっては、とても楽しい学問の場になるはずです。

■1学期はどんな感じなのか?

1学期は、経理の人がUMLのクラス図を書きながら要求開発を学び、僕のような技術者が会計のT勘定の付け方を理解し、営業の人がC言語でポインタを覚える、という流れです。びっくりですね。営業職の人がC言語のポインタと配列を使ったコードが書ける、というだけでプログラミングをしたことがある方ならそのすごさをわかっていただけるはずです。

大学に行ったことが無いのでわかりませんが、恐らく一般教養をより専門的、かつ実務にあわせたカリキュラムに圧縮して学ぶという過程になります。今まで理解できなかった自分とは違う職種の仕事について学習していくことで、業界・職種の壁を越えた「プロトコルの統一」ができるのがわかります。

面白いのが、各専門の人同士で、情報の交換があるということです。会計は経理の人に、プログラミングなら僕のようなコンピュータエンジニアに、それぞれ情報を求めるのです。しかし、カンニングをするという訳ではありません。理解を促すために情報交換をするのです。これで単位を取りつつ活きた知識が教授以外からも得られるなら、いいじゃないですか。しんどいですけどね。

そして、その上で主指導の教授を選びます。入学時には選びません、1学期中に選びます。様々な分野の講義を受けた後、自分の掘り下げたい分野をもとに教授を選ぶ…とはならず、たいてい掘り下げたいテーマを探し直すことから始めます(※1)。その際、様々な分野の教授に話を伺うことで、その方向性を固めて行くというパターンの方が多い気がします。僕もそうです。

成績もそろそろ出てきています。それなりによかったのですが、絶対評価ですから多分他のクラスメイトもそれなりにいい評価が出ていることでしょう。それ以上に修論をどうするかが重要です。

■2学期は…

2学期から、講義は徐々に専門性を帯びてきます。僕は統計解析とコンピュータに関する講義を中心に取っています。他にも、マーケティング、経営組織論、ファイナンス系をはじめとした経営に関する分野の講義も一部取っています。そもそも経営に関する学問を深める研究科ですが、数理やコンピュータに関することが取り組める点は、企画・営業ばかりでなく技術系の社会人にとっても非常によい機会です。

講義を受けながら感じるのは、日本は Operations Management についての教育をあまりしてこなかったのでは、ということです。小売りであればPOSデータ、インターネットサービスであればアクセス数や購買履歴、そして流通であればSCMなど、数値を用いて戦略を立てなければならない場所は数多くあるのにも関わらず、学校で学ぶ機会は少ないのではないでしょうか。技術者がもっと経営に関わることが出来るチャンスとも言えます。

そう考えますと、技術者はもっと前に出てもよいのでは、そして自分が更に前に出てみたくなります。

■それでは何を原動力にするのか

講義後に飲み会に参加した際、負い目を感じながら生きてきたことは講義をしていただいた教授に見抜かれていました。言葉の端々にそれを感じた、と。GSSMは社会人経験を持った学生ばかりが集まる所ですから、多くの学生を見ていらっしゃる中でピンと来たのだと思います。それは、別に僕のような人間でなくても、社会人に対して理解がある教授が多いとも言えるはずです。

講義は確実に進んでいます。でも、講義はプロセス。ゴールへ向かうための修論の研究を始めるのは苦しくてたまりませんが、決して嫌いではありません。やったことが無い分野で慣れも無いことから、苦しむのだと自分に言い聞かせています。主指導を担当していただいている教授にも、研究活動のいいスタートを切らせていただいていて安心しています(※2)。

では、何を原動力にするのか。正直、今は何も考えていません。考えなくても、体が動いてくれるのです。これは不思議な感覚です。誰を敵に回すことも無く、あえて言うなら多くの人を取り込んでいく。うまく行きはじめていますので、まずは問題が出るまで走ってみようと、意気込んでいます。

※1 研究計画発表というのがありますが、たいていのクラスメイトは教授からバシバシと問題点を突かれ、ぐったりするのが定番です。それを踏まえて、研究計画を練り直す動機を立てます。すんなり行く人は、片手で数えるくらいかなぁ…。

※2 研究計画の練り直しが思うように進んでない、ヤバい、ヤバい!

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