前回、僕が発達障害(混合型 ADHD)と診断されて、それが仕事にどう影響したかをお話ししました。これは、内々に僕が発達障害だと伝えた人からよく聞かれる質問で、おそらく他にも同じ課題を抱えている人がいるかもしれないと思い、書いたものです。これと共に、発達障害の検査がどのようなものかも聞かれます。この記事では、自分がどのようにして発達障害と診断され治療が始まったのか、そのプロセスを共有します。これが他の発達障害を持つ方々、または診断を受けようと考えている方々の一助になれば幸いです。

おことわり

人によって経緯や体験が異なるので、あくまで僕の個人的な体験として参考にしてください。

実際に検査・治療を受けられる方は、必ず医師をはじめとした専門家の指示に従ってください。

検査項目は書いていますが、具体的な詳細や参考記事へのリンクはあえて省きます。それは、事前に詳しく調べてしまうと、無意識のうちに検査結果に影響を及ぼしてしまう可能性があるからとのことでした。

薬の効能と個人的評価については触れません。これは法律上の問題(薬機法)があるためです。

TL;DR

この記事では、実際に発達障害の診断を受けようと考えている人に向けて、僕の経験談をお伝えするものです。まとめると次のとおりです。

  • 耳鼻科の検査に始まり本当にたくさんの検査項目を経て結論が出る。
  • インフルエンザの検査のようにはっきりとわかるものではない。
  • 自分に合った主治医の先生は何名か経ないと出会えないかもしれない。

そもそも、診断を受けるかどうかの意義については、前回の記事を参照してください。この記事を読んでいる前提でお話を進めます。

発達障害がわかったとして どうするか #ADHD #ASD

検査の経緯とその項目

先の記事でもお話ししましたが、僕が検査を受けたきっかけは、パーティや雑踏で人の声が聞き分けられないところからでした。では、どのようなプロセスを経て診断されたのか、簡単にまとめます。

  • 検査開始: 38歳 (2019年 4月ごろ)
  • [いつもの耳鼻科] 聴力検査 → 異常なし
  • [大学病院 耳鼻科] 聴力の精密検査 → 異常なし (2019年 5月ごろ)
  • [大学病院 耳鼻科] 脳 MRI → 異常なし (2019年 6月ごろ)
  • [大学病院 精神科] 生育歴調査, 神経心理検査 (2019年 7月ごろ)
  • ADHD 診断: 39歳 (2019年 8月ごろ)

まず、アレルギー性鼻炎で罹っていたいつもの耳鼻科に相談するところからスタートでした。その日は、この後にお世話になった大学病院の耳鼻科の先生が担当で、まずは聴力検査をしましょう、ということになりました。結果、そこでは異常なしとなりました。しかし、今日始まったわけではなくずっとそうだったと話をしたところ、では大学病院に来てください、精密検査をしましょうという話になりました。

続いて、大学病院で聴力の精密検査をしました。検査だけで 3 時間かかりました。大学病院にある聴力検査機器のほぼ全てを使ったんではないかと思います。しかし、ここでも異常なしと診断されました。これは疲れたんですが、この後に続く検査に比べればまだまだ序の口だったようです。ここで、聴力そのものが悪いことは否定されました。

その後、脳が悪いのかもしれないとなり、脳 MRI 検査をしました。よく、脳卒中の検査でするものですね。ここでも、特に問題なしと出ました。そこで、今でも覚えているのですが、耳鼻科の先生が「自分がわからない別の問題にかかっていると思う。驚かないでほしいが、隣にある精神科に行って検査を受けてほしい。ひょっとしたら、注意力の問題かもしれない。」と言われました。そのときは、「そうですか、わかりました。」としか言えませんでした。ここまででもかなりの検査をしましたが、さらに検査が待っていること、そして精神科と言われて何か自分自身に特別な事情があるのかと驚きと不安があったことを覚えています。

たぶん、皆さんが気になるのはこの先かなと思います。

隣にある精神科に移りました。そこで始まったのが、生育歴の聞き取りでした。生育歴とは、自分自身が生まれ育った時の環境を聞き取る調査です。ここでは、自分自身だけでなく、親や兄弟、そしてパートナーからの意見も取り入れられます。この聞き取りは 1 時間以上続くので大変です。

そして、検査(神経心理検査)をしましょう、となります。検査結果のレポートを見ると、次の検査をしたことが残っています。具体的にどのような検査が行われるかは伝えてはいけないとされるため、感想のみとします。

  • WAIS-IV
  • CAT
  • CPT (SRT, AX)
  • AQ
  • ASRS-v1.1
  • CAARS

WAIS-IV は、いわゆる知能指数(IQ)を測る検査です。この試験はのべ 2 時間かかり、正直 TOEIC の試験より疲れました。脳のベンチマークテストをしているからとも思えます。お願いすると休憩も取らせてもらえる場合があるので、あらかじめ相談しておきましょう。僕は、半分終わったところで、大学病院内のカフェで休憩させてもらいました。

CAT は、注意力を測ります。これも WAIS-IV くらいに負担がありました。

CPT は、注意の持続時間を計測します。 CAT と CPT は同じ日に測定したのですが、まあ大変でした。この日もカフェで休憩しました。

AQ は、 ASD に関する質問紙でして、記入して提出しました。質問項目が多いので結構大変です。

ASRS-v1.1 は、 ADHD に関する質問紙です。これもポンポン答えていかないと大変です。

最後に、 CAARS も ADHD に関する質問紙です。こちらは身近な人も記入をお願いして、本人の評価と比較することになります。僕の場合は相方に記入をお願いしました。大変だったと言っていました。

以上の検査は、すべて健康保険でまかなわれました。巷では自費で検査するところもあるようですが、僕のケースではそうではなかった、と記しておきます。また、平日の日中に実施されたため、会社を休む必要がありました。あと、実際に発達障害と診断された他の人に話を聞いたところによると、こんなに検査するのは珍しいのでは、とも言われています。

発達障害の検査結果と治療方針はスパッとわかるものではない

発達障害の判断は、インフルエンザの検査のように陰性・陽性とわかるものではありません。僕の場合、先の 6 つの検査項目を踏まえ、 2 週間の期間を経て報告されます。

そして、検査結果の説明には「発達特性としては混合型の ADHD 症状が考えられ…」と、断定していません。そういう傾向があり、程度がどの程度、と記されています。発達障害で別にある ASD が「自閉症スペクトラム」、すなわち分布を意味していることからも想像できるかもしれません。

そのため、検査結果の説明には 1 時間以上使っていただいたことを記憶しています。その時に感じたのは「ああ、そういうことだったのか。今までどうしてうまくいかないことがあったのか、状況が理解できてよかった。」でした。ショックを受ける人もいるそうですが、僕はそれはありませんでした。

ただ、難しいのが、これだけの情報を得たとしても、どの問題をどのように対処すべきかはすぐにはわからないことが多いです。先にも述べたとおり、僕はパーティで人の声が聞き分けられないとお話ししましたが、この結果を踏まえて何か決まった薬を飲めば一発解決とはいきません。これが感染症をはじめとした普通の病気とは違った難しさがあります。なので、先のブログで「わかったところでどうするのか」と書きました。

自分に合った主治医に出会うために

僕の場合、大学病院で診断が終わってからは、市中のクリニックで投薬などの治療が始まりました。

僕は鼻アレルギーで長期間病院に通ったことがあるのでそれと比較したいのですが、精神科の先生は「合う・合わない」が出やすいと僕は感じます。 ADHD の治療にはいくつかの薬が存在しますが、種類の選択と使用量の調整がなかなか難しいのと、先生の専門性に関する得手不得手、そして患者と先生の面談による治療の相性も大きな要素で、これが合う・合わないのブレが大きくなる要因の一つではと考えます。

僕は 3 つの病院を経験し、現在の主治医の先生に出会いました。 1 つ目は悪くはないのですが、規模が大きいクリニックでいつもかかる先生が変わるため、話をどうあわせていいかが大変でした。 2 つ目は本当に診療しているのか甚だよくわからないし、薬の量の調整も一切やってくれなかったのでこれはあかんとなりました。 3 つ目の今の先生にお世話になる時には、会社の産業医の先生(精神科)にセカンドオピニオンを推薦いただき、紹介された先生でさらに紹介を受けたところでお願いした、というものになります。場合によっては長い旅になるので、これはこれで大変です。特に、医院を頻繁に変えることは「ドクターショッピング」と呼ばれ、問題視されることがあるため、慎重に行動した方が良いです。

そして、 ADHD の薬は基本的に高額です。自立支援医療制度の援助もあり、負担額は 3 割から 1 割に減っていますが、それでも薬代が月額 5,000 円程度になっています。結構高いですよね。そして、これが一生続くのだと思うと気が重いです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html

投薬以外にも治療を受けています。認知行動療法ですが、僕は特に毎日の日記をつけることで、問題が起きる時の傾向を客観的に知り、先生と情報共有しながら解決できるようにあたっています。 ADHD には不注意・多動・衝動の特性がありますが、これらが社会生活での影響が出ている場合にどのように解決していくのか、相談と試行を繰り返しながら解決していきます。 PDCA サイクルを回している、と言えばわかりやすいかもしれません。また、元々の問題だったパーティのような解決が難しい問題については、意図して避けることで問題を明るみにしないようにしています。

発達障害の治療において、薬物療法と同じくらい、これらの面談を通じた治療が重要だと認識していただければ幸いです。

おわりに

ここまで、どうして僕が ADHD とわかったのか、その検査の経緯についてお話ししました。神経心理検査にたどり着くまで数ヶ月かかり、そしてその検査も時間がかかってようやく結論が出ること、わかったとしても感染症などとは違いこれといった決定的な治療法があるわけではないこと、そして治療を進めるための先生と出会うのに僕は一苦労した、というお話をしました。

改めて、僕個人の見解ですが、何か困っていることが具体的にある場合はさておき、興味だけで検査をするには大変なコストがかかるのと、実際に結果が出た時にどう受け止めるかを考える必要があるため、検査を受ける意義についてはよく考えた方がいいかなと思いました。

そして、具体的に困っている人が診断を受けた後は、その結果を踏まえて長い長い治療が始まります。それも個々人の特性によってあわせた対策が必要になり、先生とよく相談をしながら進める必要があります。可能であれば、当事者の集まりなどで、他者の経験からも学ぶこともよいかもしれません。

以上が、誰かの参考になれば幸いです。

※この記事は ChatGPT(GPT-4) と壁打ちしながら作成しました。