いつかは SAJ スキー検定(バッヂテスト) 1級を取ると決めて3シーズン。長かった。子供の頃から運動が苦手だった僕が、どうやって1級を取ることができたのか、記憶が定かなうちに記録に残します。

この記事は、運動が苦手・得意ではないけれど、スキー検定 1級に挑戦してみたい人に向けて書かれています。若い時に運動をある程度やっていたり、そもそも運動が得意な方には合わない内容があるかもしれません。

「得点の推移」「陸での練習」「コブの練習」「衝撃だった内足内くるぶし」そして「合格した時のこと」の5つにまとめてお話しします。

TL;DR

  1. 陸の上でできないことは雪の上でもできない
  2. コブの練習のステップはズルドンから始まって徐々にターンに繋げてゆく
  3. 内足の内くるぶしを使って板を目一杯使う滑り方が存在する

得点の推移

3シーズンかけて合格点が出るようになりました。大回りと総合滑降はたちまち点が出るようになったのですが、不整地(コブ)で時間がかかり、そして小回りがなかなか点が出ずに最後まで苦労しました。これは僕の体の可動域と技術の両方の問題があり、それを解決するのが今回のチャレンジの根幹になっています。この話を後述していきます。基本、白馬で受けているのですが、最後の方がガーラ湯沢スキー場なのは、仕事の予定との都合で受けにいきやすい事情があったためです。

日付 スキー場 大回り 小回り 不整地 総合滑降 合計
2024/03/31 ガーラ湯沢 70 70 70 70 280
2024/03/03 ガーラ湯沢 70 68 70 70 278
2024/01/14 白馬五竜 69 69 67 71 276
2023/03/26 白馬五竜 70 69 67 70 276
2022/03/21 白馬五竜 70 69 69 70 278
2022/02/06 かたしな高原 67 67 68 68 270
2021/12/26 八方尾根 69 69 69 69 276

参考までに、検定を積極的に受け始める前(2021年2月頃)の動画が残っているのでどうぞ。あとで、1級合格直前の動画もあるので、あわせてご覧になってみてください。

陸での練習

2020年8月末、コロナウイルスが猛威を振るう真っ最中。健康を維持したい、できればスキーが上手くなるための体を作りたい。そう思ってジムのパーソナルトレーナー、柏木 義則 先生の門を叩いたのが、この話のスタートラインです。今でも覚えています、最初に言われた言葉。

「ちゃんと立ててないです」

実際、ヨガのインストラクター資格(RYT200)を持つくらいヨガにハマった相方からも「ストレートネックで姿勢が悪い」と言われてはいました。正直、今考えるとよくこれでスキーをしていたなという体型でした。身長 173.5cm なのに体重が 57kg そして体脂肪率 12.8% とヒョロヒョロもいいところでした。体が整っていなかったので、どんな運動をやってもうまくいかないのはある種当然でもあったのです。

ここから、そもそもの体づくりを兼ねたオフトレをまともにやるようになりました。最初は自重で正しいフォームを作るところからスタートという、学生時代に運動をやっていた人から見たら「そこからかよ!」と言われそうなレベルでした。実際そうでした。シーズン中に撮影したビデオをもとに、それをオフトレにフィードバックするサイクルが作られていきました。これをもとに、週2〜3回の自主トレ、月2回程度のトレーナーさんの指導というスケジュールでこなしていました。正直、2022年までは体がなかなか思うように動かなくて、運動は難しいなと感じていました。体調の維持・向上は確かにできていましたが、スポーツができる体としてなかなか成長した実感がなかったのです。

2023年からは積極的にフリーウエイトを取り入れられるようになりました。主に、バーベルを使ったスクワットとデッドリフト、そしてダンベルによるベンチプレスです。前者2つは基礎体力をつけるために行い、後者は胸椎の柔軟性を出すためのストレッチを兼ねてやっています。また、ロータリートルソーによる胸椎の柔軟性を出す運動、バックエクステンションを使った臀部(意図的に背筋ではなく)の緊張を保ち続ける練習、ケーブルマシンを使ったものなど、色々やるようになりました。ボスバランスという半球のバランスボールを逆さ(丸い方を下)にして上に乗りバーベルスクワットもできるようになるほどにバランス感覚もついてきました。トレーナーさんがいる時は、ラダーやハードルを使ったファンクショナルトレーニングもやります。増量にも成功し、体重は最高 64kg 体脂肪率は 17% まで増えました。ここまで来るとオフトレ自体も楽しくなり、姿勢もずいぶん良くなりました。

そして、 2023-2024 シーズンに入って、雪上でも体が思った通りに動くようになってきました。最初の数年はそれほどまでに体が動かなくなってたとも言えるし、どうにか努力するとそれは改善につながることが感覚で理解できました。この感触を得て、今シーズンこそは…となったのはいうまでもありません。なお、今はシーズン中のため 61kg 13% 台まで下がっています。

コブでの練習

コブがまともに滑られるようになったのは、 2023-2024 すなわち今シーズンからです。それまでは全く歯が立ちませんでした。これはオフトレで胸椎の柔軟性を出す練習、そして下半身の基礎練習が実ったのではと考えています。スキル獲得の段階として、まずは「ズルドン」でコブの中で適切に制動とラインを覚えるところからはじめ、続いて回し込みターンを徐々に学んで流れを作り、滑り込んで完成させていくものでした。

2月のある日、八千穂高原スキー場の急斜面コブで突然自転車に乗れるようにコブを滑ることができるようになったのは、自分の中で驚きと共に今でも鮮明に覚えています。そして、今ではコブ好きになってしまいました!文字で説明するより、動画で見た方が伝わるはずなので、どうぞ。

いろいろな人の話を総合すると、コブがなかなか上手くならない人は、板が合っていない(特に硬すぎる)か、可動域を出せる体が出来上がっていないか、単に怖がっているかのどれかかもしれません。でもこれを言ってくれる人はなかなかいません。

衝撃だった内足内くるぶし

今シーズン最後になりそうだった1級検定の1週間前の3月24日、白馬五竜スキー場で、中島 智吏 先生の指導を仰ぐことにしました。今シーズンの初め、定宿の常連さんの薦めで夜の飲み会でご一緒し、いろいろ衝撃的なお話を伺ったのがきっかけです。その後も、何度かお会いすることがあり、これはご縁があるのかな、できることなら不得意種目の小回りを解決できる教えを受けられないものかと考えて連絡をしたのでした。

僕はスキーを再開してから様々な先生の指導を受けてきましたが、中島先生ほど結果を出す先生は初めてです。下の写真はターン前半から「内足の内くるぶし」を使った滑り方を学んだ前後の比較(先生が撮影した動画から抜粋)です。この間、リフト1本分 15分の出来事です。

指導前はタングに脛を押し当てて外足に乗る滑り方で、これはよく習うものです。でも、これだとスキー板のテールが使えてなくてターン後半の滑りになりがちで、急斜面でのコントロールが難しくなっていました。姿勢が前に被っているのがそれを悪い形で助長しています。
これが指導後になると、そもそも楽そうに滑ってますね。実際楽です。内足の内くるぶしをターン前半から意識して使うと、自然とスキー板がターンしていく感触がありながらも外足の荷重は抜けたようには見えません。板も全体が使えているので接地感も高いです。内くるぶしを使っているのでクロスオーバー時の重心移動も最小限です。なので急斜面でも余裕を持って滑ることができるようになりました。
たったこれだけ、ただ他ではなかなか習えない技法を学んだことでここまで変わるのかと、その時も、そして今も衝撃です。このブログ記事を書いている中で動画や写真を見返していてもそう感じます。ただ、言葉だと正直わからないところがあると思うので、実際習ってみた方がいいです。

この日は1日レッスン(といっても8:15〜12:15過ぎでトイレ休憩以外ほぼぶっ通し)だったのですが、他に明確に習ったことといえば急斜面で板が重なってしまう症状の予防です。スタート時にプルークスタンスをとって外足の股関節を畳み、上を向いてからそのまま下を向いて板の上にポジションを乗せられるようにする、というものです。これで、意図しない板の走りが抑えられました。バリエーショントレーニングとかをたくさんやるとかはないのもまた不思議なレッスンでした。

あとは、ガンガン滑り込んで動画を見てフィードバックをもらうサイクルを繰り返していました。先生は追い撮りもしてくださるのですが、シルエットが昔の自分では考えられないくらいどんどん綺麗になっていくのがわかって嬉しくなりました。先生からも今日の成長は著しいとの評価をいただきました。その時に撮影いただいた動画を編集していますのでどうぞ。先の練習を始めた時の動画とは別人のようになっているはずです。

これで、小回りも自信を持って臨める実感を持って白馬を後にしました。

合格した時のこと

今シーズン最後の1級検定は、ガーラ湯沢スキー場で受検しました。この週、出張もあり移動の負担が少なく土地勘があるスキー場としてガーラを選びました。そして、この日のためにシーズンインからほぼ毎週末、練習を重ねてきました。

この日は霧がひどく、リフトの搬器の2つ先が見えるか見えないかという状況で、心眼と足裏が頼りの日になりました。なお、検定員さんたちは斜面の中腹にいて上から下まで見通せる状況を作られていました。斜面は、整地はジジの最後の落ち込みから終点まで、不整地はエンターテイメント下部で分岐する急斜面(裏メロディに合流するルート)で自然コブが3レーンあり写真から見て右はピッチが狭い(3.5m くらい・写真では林に隠れている)・真ん中はピッチが広い・左はただの不整地となっていました。雪質は、霧雨の効果でザラメ雪ながらも板が走りました。合格証明書の発行が終わった後、霧が晴れてこの写真が撮れる状況になったのは少し笑ってしまいましたw

念のため、事前講習はあらためて受講し、最終調整のためのフィードバックを受けました。講習中に質問できる時間があったので聞いたところ、特に小回りで板が横に向いている時間が長いから下に落とす時間を伸ばしてほしいという指摘を受けました。これは最後に調整できたと思います。その時の状況に応じた最終調整として、事前講習は2回目以降も省略せず受けられることをお勧めします。

感想を種目別に、当時のことを思い出しながら書いてみます。

  • 小回り: スターターの方が「スタート時に声を出していきましょう!」と言われていたので、年甲斐もなく「お願いします‼️」と声を出しながらスタート(その後全部声出ししてスタート)。スタート時の儀式も含め、先週の中島先生の練習通り滑ることができました。これまで苦手だった種目で非常に手応えが良かったので、この後の滑りにも高い集中力を保ちながら臨むことができました。
  • 大回り: 視界が悪いので速度と衝突に十分気をつけて、とのこと。そのため、速度はあまり出さずに(怖くて出せない)、内足内くるぶしを使って滑らかに連続して荷重を移動させる滑りを心掛けました。
  • 総合滑降: 写真を見ていただくとわかりますが、斜面変化がありやり方を間違うと減速し点が出ません。検定員さんが中腹にいたのをよいことに、急斜面側でギルランデを入れて、その後の緩斜面へは速度を上げて繋げていくようにしました。そして、この作戦を練る余裕があったのはこれまでとは違っていました。
  • 不整地: おそらく点が出やすいであろう一番細かいピッチのコブレーンを選択し、回し込みターンでこなしました。不規則なリズムのところは踵を引いてリカバリー成功です。

ガーラ湯沢スキー場の検定結果の発表は、点数集計後に全員が集められて番号が呼ばれ前に出る形で行われます。そして、その時がやってきました。自分の受検番号「4」が呼ばれた時に、「ああ、長かった、ようやっと結果が出たんだ…」と嬉しさが込み上げてきました。そして拍手を受けます。この方式、合格した感が高いので体感したい方はガーラでどうぞ。なお、スキー場によって発表方法が違い、滑走直後に点を出すところ(八方尾根が有名)、時間になったら点数表を貼り出して確認する方式(割と一般的)などがあります。

おわりに

スキー検定 1級合格までにやったことを、特に今シーズンに焦点を当ててまとめてみました。そもそも、スポーツが苦手だなと思う方はまずは動ける体を作ることから始まること、コブはズルドンから始まりターンの練習を重ねていくことで完成度が高まること、そして内足の内くるぶしを使って板を目一杯使えるような滑りを獲得すると不思議と楽に滑ることができるのをお話ししました。

僕はこの経験を通じて、自分が運動が苦手な人間であるという認識を42歳にして払拭できたと考えています。40代を過ぎると体を作らないと大変なことになるのを見始めているので、ちょうどいい時期だったかもしれません。

さて、次の目標をどうしようかと考えています。スキーなら、準指導員(インストラクター)資格取得・テクニカル(段みたいなやつ)取得・競技スキー大会出場・コブを制覇するなど、いろいろな世界が広がります。スキーが好きな友人から「ようこそ!」なんて言われていますw そうなんですね、1級って本格的にスキーを楽しむためのスタートラインでもあるんですね。このオフに考えてみようと思います。

また、運動そのものもさらにいろいろできるようになってくるかもしれません。オフに、お金がそんなにかからないけれど体を動かせるものを探してみるのも良さそうです。

これまで僕を指導してくださった先生方、どうもありがとうございました。そして、みなさま、またゲレンデでお会いしましょう!

付録1: お世話になったスキースクール・先生

ベストプラクティスを無駄なく学ぶには、良い先生から学ぶこともまた大切だと僕は考えています。

  • 中島 智吏 先生: 白馬五竜スキー場を拠点に活動されています。元SAJデモです。プライベートレッスンのみで、希望に応じてカスタマイズされたカリキュラムが組まれます。初めての方はまずは問い合わせてみてください。
  • 白馬五竜スキースクール: 白馬五竜スキー場公認のスクールです。レベルの高い先生が多く、その割にはプライベートレッスン料が割安です。プライベートレッスンはタイパも良いのでお勧めです。
  • Directline.pub: コブ専門のスクールです。2級に合格してコブを始めたい人から、1級以上のよりコブをうまく滑りたい人までどうぞ。白馬五竜スキー場を含め日本各地で開講されていますが、僕は日帰りで行ける尾瀬岩鞍スキー場で受けました。

リストアップしたら白馬五竜スキー場ばかりになりました。ここのスキー場、僕は大好きです。ただ、行く時は泊まりがけになるので、日帰りで行けるところほどは頻繁には行けません。

付録2: マテリアルについて

  • スキー板: K2 Disruption STi 165cm R=13.6m – メタルこそ入っていますが、そこまで硬くはないスキー板です。体重がない僕でもたわませやすく、コブに入っても楽しいです。
  • ビンディング: Marker MXCELL 12 TCx Light Quickclik 解放値:6 – 基礎用ですが高さはそんなにありません。扱いやすいです。
  • ブーツ: REXXAM Porer REX-M 95 + フォーミングインナーブーツ + 特製インソール – 中島先生から、さすがにこのレベルになると柔らかすぎないかと指摘されています(汗)。来シーズンは買い替える予定です。
  • ストック: SINANO の伸縮式です。 108cm に設定しています。練習していると適した長さが変わってくることがあるので、伸縮式がお勧めです。