週末、前から行ってみたかった「東日本大震災・原子力災害伝承館」、「震災遺構 浪江町立 請戸小学校」そして「東京電力廃炉資料館」を訪ねてきました。せっかくなので、あったかいうちに記録を残しておこうと思います。

写真撮影は、許可された範囲内のみで行っております。

たどりつくまでの話

常磐自動車道を三郷ICから乗ってひた走ること約3時間(休憩あり)。本来降りるのは常磐双葉ICだったところを、一つ手前の大熊ICで降りてしまいました。ここは今回の話題の中心である福島第一原子力発電所の最寄りICでして、降りたら周りは帰還困難区域だと一目でわかるほどの、まるでフィクションに出てくる世紀末のような雰囲気の場所でした。これから、大変なところに行くのかもしれないと想像するには十分でした。駐停車していいかわからなかったので写真はありません。

東日本大震災・原子力災害伝承館について

「東日本大震災・原子力災害伝承館」は、福島県双葉郡双葉町のもともと集落があった場所を再開発して作られた資料館です。隣に双葉町産業交流センターがあり、訪ねた日は「FUTABA FOODFES 2024」をやっていて、朝イチで来なかったら駐車場が確保できなくなりかけました。ただ、普段は駐車場には困らない気がします。

資料館には人生で様々なところを訪ねて来ましたが、ここの特徴は「現在進行形」と「客観的事実に基づくことを心がけている」ことです。東日本大震災が起きて13年。皆さんも報道などで復興について話を聞いたことがあるかと思うのですが、その今がここに集まっているのと同時に、ここに住む・住んでいた人たちにとって東日本大震災は何も終わっていないことを知ることになります。さらに、客観的事実とデータに基づいた展示に注力し、今の状況を正確に知り、伝える努力をされていると僕は感じました。その粛々とした説明から、かえって心に来るものがありました。

僕はここに来たらぜひ立ち寄りたいと思っていたのが「語り部」のコーナーです。午前2回・午後2回の入れ替わりで、周辺に住まわれている方が実際に講演をしてくださります。この日は、建築士の方の「東日本大震災と避難生活の実態」という、東京にいるとあまり聞くことのできない「その後」を聞けるお話でした。40分お話があってかなり盛りだくさんだったのですが、印象的だった部分を箇条書きにしてみます。

  • 原子力災害に立ち向かうために、原子力の用語や知識を学び、正しく向き合う努力をされていた。
  • 安全とは何か、客観的なデータに基づきながらひとつひとつ問題を解決されていた。
  • 40代の人がいない。だから元気な高齢者を中心に街を盛り上げていく必要がある。
  • 感情は時折入っていたものの、それに頼らない説明を徹底されていた。
  • (そしてカンペ・スライドなしでトークをそらでぶっ通しで話されていた)

どのようなテーマかは公式サイトに掲載されていますので、事前に調べて聞いてみたいトークの日に行かれるといいかもしれません。話している人も、そして話を聞いている私たちも、実際にあの日をどこかで経験しています。それもあり、リアリティが違います。

ちなみに、今ブログを書いていて気づいたのですが、2Fの位置は津波の水位を基準に作っているように見えました。窓側の柱に水位のマーキングがしてあることから思ったのでした。

震災遺構 浪江町立 請戸小学校について

伝承館から車で5分。海岸に程近いところに小学校の遺構があります。

写真の遠くに小高い丘…大平山がありますが、2〜6年生の児童と先生の皆さんはここに走って逃げ、津波の難を逃れたそうです。破壊された教室の説明とともに絵本の一幕が掲載されています。確かにここに小学校があったことはわかるのですが、あの距離を逃げ切れたのか…と思うと、大変なことだなと思わずにはいられません。

比較的状態が良かった2Fは展示室になっています。実際に避難した児童の子たちの10年後のレポートなども掲載されています。色々思うところがあったのですが、できればご自身で読みに行った際に抱かれた感想があればそれを大切にしていただければ幸いです。僕は転勤族だったので故郷というものはありませんが、彼ら・彼女らにはここが故郷だったわけで、それを強制的に追われた気持ちというのは、察するにあまりあります。

東京電力廃炉資料館について

伝承館から車で20分くらい南下するとあります。もともと結婚式場だったのかなと思うような佇まいです。

ここは普段はガイド付きツアーで説明があるそうなのですが、日曜日はフリーで見学することができます。展示はビデオの説明が非常に多いので、最低1時間はみておいた方がいいです。

僕は、原子力災害の件については、双方の意見を聞いておく必要があるのではと思い、両方とも見ることにしました。ここで話を聞いていて感じたのは、組織が巨大になると顕在化していないけれど重要なリスクが見えにくくなる、そしてそれはどの組織でも起こりうるのではないか、ということでした。話を聞けば聞くほど、実際に被害を受けた人以外に石を投げられる人はどれだけいるのだろうかと考え込んでしまいました。

注意点として、向かいにショッピングセンターがあるのですが、こちらのフードコートの売店はなんと日曜日はお休みです!なので、ヨークベニマルでお弁当を買ってフードコートの席で食べることしかできませんのでご注意ください。

割と凹む

今日は、大人の社会科見学と称して、東日本大震災における福島県 浜通り地方の被害と現状について学ぶ日になりました。ここに行こうと思った時、多分凹むだろうなとは思っていました。この凹む感覚は、広島の原爆資料館での見学の時以来です。実際、凹みます。ただ、ここで故郷を追われて凹むでは済まなかった人たちに比べたら、ずいぶんマシかもしれません。

そして、浪江町では、東日本大震災を忘れないでほしい、という気持ちが滲み出ているように僕は受け取りました。なので、資料館の名前に「伝承館」という名前がついているのでしょうね。

生きていると、いろいろな意見を持つ機会ができます。原子力もその一つです。僕は、その意見を持つときに、できる限り自分の引き出しに様々な角度の知見を自分の体を使って集めておきたい、そういう気持ちでいます。みなさんも、時間を作って良かったら足を運んでみてください。