土曜日は、インプレスホールディングスの株主総会へ行ってきました。

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このブログをごらんいただいている方はご存知の会社かと思いますが念のため。インプレスは1992年にアスキーのメンバーが独立して興したコンピュータ技術関連の書籍を取り扱う出版会社です。過去に「Internet Magazine」という、インターネット創成?成長期であった1990年代に僕がインターネット情報のバイブルとして読んでいた(※1)、伝説の月刊誌を出版していました。現在はM&Aなどを重ね、コンピュータ技術以外の出版物の取り扱いも行われています。

唯一の負け銘柄

さて、僕がインプレスの株を買ったのが3?4年前。当時の株価は4万円台でしたが、今は212円(100分割して1単位100株なので実質21,200円)となり、価値としては半分になりました。この間、僕は仕事が忙しかったり、景気は大きな打撃を受けたり、そしてインプレスは売上が振るわない状況になり、株価が下がっていたのをスルーしてしまっていました。僕が投資していて、唯一「現在のところ負け」ている銘柄でもあります。

まあ、一体全体どうなっているのか、有価証券報告書に表れている数字は毎度見ていますから、そんなことより牽引している人たち…すなわち経営層の人はどう今を考えているのだろうと思い、足を運ぶ事としました。

土曜開催はありがたい

場所はベルサール九段。朝起きたのがぎりぎりでチャリを飛ばして九段下へ。そしたら余裕たっぷりの時間についてしまいました。

今年の株主総会の集中日は26日(金曜日)ですが、インプレスは毎年週末のお休みの日に株主総会を開催していただけるため、サラリーマン投資家でも株主総会に出席しやすい土壌があります。とてもいいことですし、これはほかの会社も見習ってほしい!

ウィーダーインゼリーを飲み終わった頃に、関本社長より開会宣言がなされました。

株主総会の流れとは

株主総会とは、すごーく端折って言うと、会社の重要な事項を決議する場です。通常は年1回開かれます。これ以上の説明は専門書に譲ります。

流れとしては、

  1. 開会
  2. 監査役報告
  3. 前期事業の説明
  4. 株主質問
  5. 決議
  6. 閉会
  7. 懇親会など

というものが一般的です。インプレスの株主総会は一般的な流れに沿ったものでいて、一時期のavexのようなライブが開かれたりとかそう言うサプライズはありません。

話のまとめ

前置きが長くなりました。今回の要旨をまとめます。

  1. 今期は無配当です。ごめんなさい。
  2. 医療関連は堅調、コンピュータ関連は苦しい状況。
  3. 不採算事業は「事業構造改革費」として特損を計上しすっきりさせました。
  4. 新しいメディアを通じて、本の出版以外の収益口を広める努力は続けます。
  5. 返品率を業界平均並みに維持するようにし、店頭での露出度と利益率のバランスをとるようにします。

僕がぴんときているのは上記です。ほかにもありますが一杯書いても仕方ありませんので、これ以外もあると考えていただいて結構です。詳細は IRのページ をご覧いただいてもよいかと思います。

質問してみた

株主総会の特徴として、一般の株主が経営者、特に社長へ直接質問できる時間があります。今回の決算の話から、今後の方針、そして事業について聞いてみたかった事など、なかなか聞けない事を株主が聞ける年に1回のチャンスです。

僕はいろいろなところで質問させていただきましたが、株主総会で質問するのは正直初めてです。途中で天パリました。要旨としては…
・最先端の情報を体系的に取り扱う出版物が減っているから何とかしてほしい。
・日本のメディアとして、昨今のインターネット事情を読み解く機会をまた増やしてほしい。
です。

これについては、社長の関本さんに加え、元Internet Magazine編集長で取締役の井芹さんからもお答えいただけました。

本の売り方を変える必要がある

まず、1点目の質問については、今までどおり書店に並べる方法では収益を上げるのが難しくなった(その証拠にInternet Magazineは今売られていない)ので、出版の仕方を変えているとの事でした。

簡単に言うと
・エッジが効いた/体系的な情報 → 調査レポート(数万?数十万円)形式とする
・切り口に多様性を持たせた情報 → 雑誌やムック(「できる?」とか)
・最新情報 → Web
で発信するというものでした。確かに、必要とする人は数十万でも調査レポートを買うでしょうし(調べる時間と人員を考えたらペイする)、最新情報はどうやってもWebに勝るメディアは今ありません。

Intenet Magazineが最盛期だった時代よりも時間の流れが進み、最新情報を体系だって説明するのは不可能なのでしょう。また、雑誌の売上が全体的に減っている今、やり方を変えなければ(※2)会社を続けていけませんから、雑誌として情報が出てくる事が減るのは仕方がないことなのかもしれません。

2つめの質問。これは、特に井芹さんから力強い回答をいただけました。

日本の出版社としてどうもって行くか、かなり苦心されているようでした。それでも、今後も出版物として先鋭的な情報を出すことも続けるし、ほかのメディアもより改善していくというお答えをいただけました(回答自体は詳細な事項にも至っています)。

客観的に考えると無難な回答と思われるかもしれません。しかし、こういう場でもありますし、何よりあのInternet Magazineを作っていた井芹さん本人から聞けたのがとてもうれしかったです。

数多くの質問がある中、ご回答いただきありがとうございました(※3)。

改めて企業評価を考える

企業価値とは果たして何なのでしょうか。僕は、次の3つの軸を持って考えるようにしています。

  • 財務や事業内容
  • 株価
  • 経営層の想いの深さ

上のほうは客観的、下のほうは主観的に評価される軸であります。また、僕が考える順番でもあります(※4)。財務や事業内容などはバリュエーションを通して分析する事ができますし、株価はテクニカル分析を初めとしたチャートの分析手法が普及しています。しかし、経営層の考え方…想いの深さの分析を解説する情報は、あまり拝見しません。

でもですよ、会社の未来を作るのはバリュエーション結果でもなく、つりあがる株価でもなく、会社に携わる人…もっというと引っ張っていく経営層の人如何であることは自明であります。

今回の株主総会に出席させていただいて、その「想い」の片鱗を垣間見る事ができ、本当によかったと思います。ちゃんとやろうと続けていれば、時間が残り2つを解決してくれるでしょう。

また、今勤める会社の中で、自分がどういう役割なのだろうか・想いは薄れていないのだろうか、という事を再確認しなくてはならないなと思っています。やがては責任を取る立場になるかもしれないと思うと、今からでもこのような考え方を養っておこうとより強く考えるわけであります。

おまけ

あ、そうそう、株主総会の帰りには、たいてい「おみやげ」がもらえます。

総会直後はお弁当(サンドウィッチ)、その後は手提げ袋の中に出版物の詰め合わせがもらえました。

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化粧品会社だと、化粧品がもらえたりする事があるそうです。どこかの会社の株をお持ちでしたら、ぜひその会社ならではのものをもらってみてください。

※1 私以外にもバイブルとして読んだ方は少なくないはずです。バックボーンマップ、毎月広がっているのを「すげー」と思って読んでいました。あそこが取っ掛かりだったかな。

※2 趣味系の雑誌では、イベントなどを開いているそうです。そこで、読者との接点をより密にしたり、新たな収益口を作る取り組みを行っているそうです。

※3 たぶん、僕の質問が回答時間がもっとも長かった(3分の質問時間に10?15分の回答時間)。株主質問のレシピにあったかどうかはわかりませんが、お二人ともご自身のお言葉で回答され、かつ「大切な事項」であるということで時間を割いていただけました。

※4 この上のレイヤーに「自分が知る事業をやっているか」があります。全く知らない事業の会社に対して投資は恐ろしくてできません。その下にくる評価ができないからです。

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