僕から見える最近のスタートアップ業界の景色 2021

僕から見える最近のスタートアップ業界の景色 2021

みなさん、スタートアップで楽しくプロダクト開発していますか!
僕は、これまでは開発してきた側、今はそれを支援する側にいます。ちょっと不思議ですね。

スタートアップを支援する側を1年あまりやってきたのですが、色々な景色が見えています。なので、記憶を記録に変換する趣旨で、僕の見えている景色をざっくりまとめようと思います。そのため、特に何か裏付けのあるデータがあるわけではありません。また、他の方が見えている景色とも違うので、「私はこうだなぁ〜」って方がいたら、その方の景色も読めたら読みたいですね。

キーワードは、計算できるリスクを最小化しながら挑戦する、です。3部に分けていまして「中堅の現場ソフトウェアエンジニアの存在の大切さ」「プロダクトマネジャーと利用者の体験と仮説検証サイクルと」そして「結局それができる中堅どころの人はどこにいるのか」です。

中堅の現場ソフトウェアエンジニア(SDE)の存在の大切さ

SDEと書きましたが、どの領域も「中堅」の存在って大事だなと考えます。僕の考える中堅って、次のことができる人を指します。

  1. アンチパターンを知っていて適切に避けることで成功確率を上げられる
  2. 人 特にジュニアの育成に取り組み組織の能力を全体的に引き上げられる
  3. トップマネジメントに対して説明する力があり現場とを橋渡しする

僕はSDE出身なので、ソフトウェアエンジニアリングについて話をします。

まずアンチパターンなのですが、一言で言うと「あ、これはまずいやつだから施しをしておくか…」と自然に動けることを指します。

技術そのものを学ぼうとすると、2021年現在においてはオンライン・書籍含め大量に資料があり、読み解き実践する時間とやる気さえあれば学ぶことができます。ソーシャルメディアを使って、人に聞くことも可能です。もちろん、有償の技術サポートを使っても良いでしょう。

しかし、経験からくる解決策は、書籍でも学べるものもいくらかありますが、それを理解するには実体験が求められるケースがあります。例えば、スタートアップ界隈で有名な書籍の一つに「HARD THINGS」という本があります。この内容に書かれているどの内容が、皆さんの胃に来るでしょうか。胃にいっぱいきた人は、多分それだけ実際に胃を痛めんたんだ想像します。

この胃を痛めた経験を通じて「失敗する要素をできる限り減らし成功の確率を上げていく」中堅どころの人がいるかどうかは、その後の成長の大切な要素になっているように、僕は思います。

続いて、育成です。これは、メンター・メンティというシンプルな育成の関係もさることながら、直接ではなくとも仕組みを整えることを通じて品質を上げて行ったり、牽引する取組みを通じて背中を見せてついて行かせることまで、多くのスタイルがあります。経験の浅い人への道標になることで、結果としてその人が中堅どころに育っていくようになれば、組織全体が強くなるのではないでしょうか。

最後に、説明する力です。トップに話すとき、多くの場合は明快な結論を求められがちです。しかし、現場で働いていると、話に予防線を張りたくなるものです。そんな葛藤を乗り越えて、現場とトップマネジメントが渡り合えるために縁をとり持てるようになれば、相互の理解も深まっていくことでしょう。

こういう「中堅どころ」がいるスタートアップ企業は、強いなと感じます。

プロダクトマネジャー(PdM)と利用者の体験(UX)と仮説検証サイクルと

プロダクト開発の際に、そのプロダクトの仕様と体験…グランドデザインを決める人が、PdMです。創業初期では創業者がやっているケースがほとんどと想像します。

2010年代までは、思いついたプロダクトを実現するべく、パッとプロトタイプを作って、それをリリース時の最小限の製品(MVP)としてしまうことが多かったものと想像します。正直なところ、それなら失敗したとしても、やり直しがしやすい状況でもありました。当時、小さく作って、数打って、当たるかを確かめていた人も、身の回りにいたくらいです。

しかし、最近はより深いニーズを理解してUXを向上させることに注力する必要性が高まっているようです。特に、使い始めたときに「使いやすそう」「自分にあってそう」というUXが良い形に働かなければ、あっという間に使われなくなる、もっと悪いと競合に移られてしまいます。

そこで、先にも出ましたが「失敗する要素をできる限り減らし成功の確率を上げていく」取組みが、プロダクトの仕様と体験の決定プロセスでも重要になってきます。特に、UXはユーザインタビューを通じて、サービスの完成度を高め、リリース前から仮説検証サイクルを回しているスタートアップもあるようです。

これには、より複雑なレギュレーション・ガイドラインを遵守しなければならない事業領域に進出するケースも増えているからと推測します。例えば、FinTechの決済サービスなら、PCI DSSに基づいた審査をクリアしなければなりません。この審査を乗り越えるのは、それなりに経営資源のある企業でも大変ですが、ましてや経営資源がそこまでないスタートアップ企業ならさらに大変なのは容易に想像できます。

一方で、PdMとして、知識と経験を積み、かつ計画的に実践できる人を育成するのは、SDE以上に難しいかもしれません。というのも、ソフトウェア開発に関する体系的には知識や資料は各種あるのですが、PdMはそれに準じたものがそこまで見つからないのです。

僕の元同僚で、古巣で一緒に仕事をした時間が最も長い、みやっちの経歴紹介記事「”普通の人”でも社会課題を解決できる社会に。NTT、楽天、メルカリを経たPM/UXデザイナーの夢」があります。各社で経験を積み、さらに挑戦する姿は素晴らしいと思います。一方で、これは本人が模索しながら切り拓いてきた道であり、誰かに何かを言われてやってきたものでもないです。なので、簡単に真似はできないと思います。

そんな中、僕の元同僚のめぐさんが「メルカリなどメガベンチャーにありがちなプロダクト開発の企画フローと成果物」という記事でまとめていて、かつ教育プログラムまで作られています。PdMとして活躍されている方、またこれから活躍されようとされている方に、福音となるものではないでしょうか。

結局それができる中堅どころの人はどこにいるのか

最大の問題。それは、この中堅どころの現場の人…SDEやPdMに限りません…が、どこにいるかです。いるところにはいます。例えば、僕の古巣の元同僚です。今では別のスタートアップに散って、また新しいプロダクト開発に取り組まれています。

では、どんな組織にそんな中堅どころがいるかというと、大体はリファラル採用です。「あれ、あれ昔のあのチームほぼそのものではないか!」というケースもあれば、別の会社で一緒だった元同僚と一緒にやっているなど、とにもかくにもリファラルに見えます。それも、その「別の会社」もまた業界ではビッグネームのことがしばしあります。たまにリファラルではないケースを見ますが、その場合はサービスが市場に受け入れられている(PMF)状況で、プロダクト開発をより推進する良いポジションを見つけられているケースでしょうか。

これは推測ですが、なぜ今まで働いていた同僚とまた働くかというと、ひとえにすでに人となりを知っていて、新しい人と組むときに出てくる不確定要素が減るからでしょう。言い換えると、全く縁のない会社に飛び込むとき、特に創業初期だったとしたら、その人がどれだけ信用がおける人かがわからない、良い関係を通じてサービスの拡大に取り組めるかわからないリスクがあります。

そういう中堅どころの人は、サービスの開発・運用ばかりでなく、自分の人生計画でも、リスクを最小化してから挑戦に取り組める環境を選んでいる、とも言えるのではないでしょうか。

では、人の縁が少ないケースの場合、どうすればいいのでしょうか。僕は3つやり方があると考えています。1つは、縁のある人を1つ確実に採用してそこから広げていく。2つは、起業前なら縁を作るつもりである程度の大きさの組織で経験と縁を繋ぐ。そして3つは、日本国籍を持たない人でも採用する、です。

他にも、採用の情報を発信されている方がいくらかいる(例: 久松さん)ので、参考にされてみてはいかがでしょうか。

おわりに

スタートアップはリスクを取って大きな果実を得る、と考えている時が、僕にもありました。もちろんリスクはあるのですが、どんな事業にもリスクはあります。だから、計算できるリスクを最小化しながら挑戦することが大事ってのがわかったのは、30代に入ってからです。

それを知っているのは、経験を積んだ中堅どころの人で、そういう人が1社にいくらかいると事業が進めやすいかもしれません、というお話でした。この経験ってのは、「成功」と「失敗」それぞれバランス良くあると、HARD THINGが来てもがんばれるかもしれません。

という、ここ最近、僕が見ている景色を、文章化してみたというお話でした。

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