<<元の記事に戻る

さて、高卒での受験で最初にくる峠が、受験資格審査です。この審査をパスしなければ、大卒の人と同じステージ、すなわち受験をさせてはもらえません。

■高卒はイレギュラーである

これはどこの大学でも言われますが、「高卒での入学はイレギュラー扱いである」ということです。要するに、本来は大卒ではないと通さないところを、一定以上の能力があるから受けてもいいよ、という審査なのです。普通に試験を受けるより難しい審査に臨むことになることを心してください。

そのためには何をしなければならないかというと、今までビジネスや生活で培った力を存分に発揮することです。受験対策を始めてからでは遅いのです。もし自信があるのなら、自分自身のビジネスの分野でこれまで行ってきたことが人並み以上であることを自分自身で話すことができ、そしてそれを証明しなければなりません。しかも、これはAO入試のようにこれだけパスすればOKなのではなく、その後に通常の試験が待っているのです。

厳しい書き方ではあるのですが、言い換えれば自分自身の能力をプレゼンテーションして相手が認めてくれればいいのです。これをやるのです。

■パターン1 明治大学

明治大学 MBS のパターンが最もシンプルです。研究計画書を大卒の人よりも早めに(9月入試なら7〜8月頃)送って、事前にその内容が受験するに値するかを審査されます。従って、遅くても梅雨が明ける頃にはスタンバイを始めなければなりません。

このパターンは研究計画書の作成に全精力を注げばよいのですが、大卒の人の経営の知識を凌駕できる内容を記述できなければなりません。本内容は次の「研究計画書から本番まで」に絡む内容なので、ここでは割愛します。

■パターン2 グロービス

受験校選定編」に書いている SPI のような試験は何?という話ですが、これはグロービスが独自に作っている経営分野に特化した SPI (GMAP) を解きます。従って、事前に経営の知識があると答案を解くことに困ることはありません。もちろん、読んだ方がいい本はこれ。

あわせて確認されるのが、詳細な職務経歴です。通常のプロセスで提出する者より詳細なものを出す必要があり、特に定量的な形で自分のパフォーマンスを表現する必要があります。コンピュータエンジニアの僕には、この書類作成は少々大変でした。逆に、営業や企画の方は書きやすいのではと思います。

これらより、ビジネスを通じて数字を見てきた人にとっては高いハードルではありません。逆に、そうではない方はマーケティングの分野のところを中心に対策を練ることでクリアすることになります。

■パターン3 筑波大学

ここまで見て「何だ、受験資格審査ってびっくりするほど難しくないんじゃん。」と思ったあなた。筑波大学は難しいですよ。これぞ「ザ・受験資格審査」という内容が待っています。それは、学会への論文発表です。

大学の学卒の人でもなかなかやらない学会への論文発表を、高卒の人間がやります。確かに、これができれば受験資格審査という機会が無かったとしても大卒相当と考えてもらえそうですが、当然簡単には行きません。僕はたまたまコンピュータエンジニアだったので、最新の技術を調べるために論文を読み、自然言語処理の勉強会である IIR輪講 にも参加していてアカデミックな知識は少々ありました。さらに、個人的に自然言語処理と企業情報のことを追いかけていました。幸運なことに、これらの経験が今回の挑戦のきっかけを作ってくれました。

しかし、論文を書くとなると、これだけでは全く不十分です。そこで、筑波大学 GSSM で学び、情報処理学会での論文発表の経験をお持ちである西森さんに協力をあおぎました。結果は、添削を行ってくれることを了解いただけるという、またとないチャンスを頂けたのです。ここまできたら、もうやるしかありませんでした。

実際に論文を書き始めますと、本当に難しいです。実験を繰り返し、他の論文・技術書のサーベイを行い、書いても書いても真っ赤っかになって返ってくる原稿との戦いです。8月中は仕事を切り上げたら、夜遅くまで毎日ずっとこの戦いでした。もちろん、受験勉強と研究計画書も平行して…。この戦いが今回の受験で僕の中で最も辛く厳しいプロセスでした。今考えますと、よく仕事がまわっていたなと思えるくらいです。

やっとのことで出来上がったのが、情報処理学会「自然言語処理を用いた企業相関関係の取得」という論文でした。発表のために会社を休んで大阪まで足を運びました。

その後、無事に学会発表が終わり、なんとか受験資格を手にすることができました。

もし、筑波大学を高卒で目指されたい方は、何より最初に学会で論文発表をされておくと良いと思います。

■毎日をしっかり生き抜くことが鍵

受験資格審査は、大学の受験とは全く違い、すぐに対応力を養うことはできません。様々な物事に興味を持ち、探求し、実地で活用する。シンプルなことですが、非常に面倒なことをやり続けてはじめて対応力が養われます。この力は受験資格審査のためにつけているのではなく、たまたま受験資格審査に活用できる力です。

言い換えれば、大卒の人を凌駕する戦いを続けた高卒の方には、自信を持って対応いただける内容なのです。

<<元の記事に戻る