■僕にはやりたいことは無い

普段、僕はIT系の中小企業に勤めています。

僕には、明確な目標や、興したい事業というのは特にもっていません。どちらかというと、自分の所属している組織のリーダーの想いをよく理解するようにして、それに対してどうやれば自分が貢献できるのかを考えながら働くことをモットーとしています。そんな生活が一つの幸せであります。

これは一人で活躍できないことを自分で肯定しているのですが、別の側面で考えると、組織の中で押さえるべきところを押さえる自信が自分の中に定着してきたことを肌で感じているのです。

■独立する気は今は無い

積極的にビジネスをやろうとすると、すぐに「独立」というキーワードが出がちです。特に、IT業界にいるとその傾向がより強くあります。

独立というと会社の鎖から解き放たれて自由に動き回れると想像しがちです。僕もそう考えた時期がありました。人は…独立した人、サラリーマン関係なく、僕に対して独立を薦められることがあります。そのときに出る共通したキーワードは「実力があるからできる」。

しかし、自分自身が今取り組んでいるビジネスは独立しないとできないことなのかと考えたとき、必要性が低いことがわかってきました。自分自身が今やりたいことはできているし、独立すると逆に実現が難しくなる。十分な理由でした。

■独立すると別の苦労があるはずだ

独立した人に、独立後どの辺で困ったことがあるか聞いたことがありました。一番多かったのは、帳簿の話です。会社に勤めていると、会社のお金の出入りは経理の人がやってくれます。しかし、独立すると先ずは自分でやらなくてはなりません。税理士さんに頼む人もいるのでしょうが、今度はお任せするためのお金がかかります。

続いて、資金調達のことでした。蓄えがあったとしてもいつかは無くなりますから、定期的に売り上げがあがるようにお客様を掴まなくてはなりません。おおっと、そうすると今度は営業活動が必要です。つてがあればいいでしょうが、無ければ飛び込み営業も辞さない構えです!

でも、こんなことはおそらく小さなことなのかもしれません。本当にやりたいビジネスがあれば、乗り切る精神力が自分にみなぎってくるんじゃないかと考えたからです。少なくても、独立する気になって大きなリスクと感じるポイントにはなりません。

そんな中、僕が最も気にしたのは、仲間です。 Co-Founder がいるかどうか、そしてその後は名も無くどこの骨かもわからない会社に勤めてくれる人が果たして現れるのか。今、中小企業に勤めている時点で非常に困っているのに、独立なんてしたら尚更大変になることは目に見えています。

■会社という環境を見返してみる

会社に勤めているサラリーマンである僕は、会社という傘に守られています。まず、定期的に払われるお給料や健康保険をはじめとした福利厚生があります。続いて、仕事をするための道具、僕なら什器とコンピュータが備え付けてあります。そして、自分ではできないことを支えてくれる仲間がいます。

仲間というのはとても重要で、自分だけでは手が回らない部分、そして自分ができないことをやってのけられる人です。それは、相手にとっても同じこと。そんな中で会社という組織の中で決めた目標に対して、おのおのが分担し、時にはずる賢く使うことで事に当たります。仕事をするにあたって当たり前のことは、会社だから容易にできるのです。

しかし、まわってきた仕事の中に自分の会社では担当できる人がいないこともあります。そんなときは、パートナーとなる会社とともに活動することも選択することができます。そのときに使うのは、会社が培った信用と、実績です。もちろん、相手のその部分を見て来ます。それを構築する一旦は、自分が担うのです。

アグレッシブ サラリーマン

「会社じゃ足かせが一杯ある」って思いがちですが、どの会社にも独立するよりアドバンテージになることは必ず存在しています。この点、独立を促そうとしている人が余り語らない点でもあります。

僕は、会社の傘の中で最大限自分が楽しんで取り組める、そして仲間と貢献し合える仕事をやることに集中するようにしています。これは、一人では何にもならないマネージャ職についている人はこの点を強く感じていただけるはずです。そして、中小企業に勤めていることを利用して、より自由な選択肢を自分の中に作ることができています。今年の春から大学院に通いながら仕事をする選択肢もその一つ。やることはやる、そしてそのぶん自分の希望も通す。強い権限の人にすぐにリーチできる中小企業だからこそスムーズにできています。

少なくても、20〜40代の時代は、こうして自分の活動をベースにして、上長、ひいては会社の経営層に対して緊張感をお互い保ちながら仕事ができます。名実共自分自身の必要性が確認されれば、会社の経営層はポジションを作らざるを得ません。もし、作られなかったら別の会社に行くだけです。逆の場合は、大変ですね。両者緊張感が必要なんです。そういえば、日経新聞の「私の履歴書」へ執筆される経営者の方は、サラリーマンからの叩き上げの方が多いですよね。

だから、会社の傘に守られていることはあっても、決して盾にしてはいけないのです。

■僕は中小企業がいい

会社は会社でも、大企業だと、確かに組織の傘が手厚い代わりに、自分の選択肢はかなり制限されます。やることが先鋭化されているともいえますし、そうして行くうちに自分の力が枯れる方向に向かうのではという危機感があります。守られすぎて、安住してしまうのでしょう。

だから、僕は積極的に中小企業に勤めるようにしています。トップとの距離も近いし、自分の活動の場もある程度コントロールしつつ自由が利きます。あわよくば、部分的に主導権を握れます。中小企業にいて、上長や経営層の言いなりで終わるのは、本当にもったいないと思います。経営方針を逸脱しない範囲で結果を出すべく自由に活動できる環境があるのだから。

もし、会社の制約がきついとしたら、それはスタッフ全員の価値観が会社組織の中で統一に向かっていないのでしょう。大企業のような多種多様な人がいるところならいざ知らず、中小企業で起きるとしたら悩ましい問題ではあります。でも、それに対して働きかけができるのも中小企業の良さです。僕も何度となくやりました。価値観が近ければ、ルールは最低限でいいのです(※1)。

全部が全部自由なんて世界は無いでしょうし、もしあったとしたらそれはそれ相応の義務が降り掛かってくるはずです。少なくても、独立は自由を手に入れる手段じゃないという理解です。

■僕の考えはまだ枯れていない

今の話、具体的な話はまだ多くありません。今、まさに取り組んでいるところだから、中身が枯れていないのです。ポジションが明確になるということは、それはもう枯れ始めているともいえます。分かりにくい話になってしまっているのですが、頭の中を引っ張り出すとこうなっていました。

極端な話をすれば、明日、気が変わって独立を選択するかもしれません。

その反面、変わらないものとして、全ての判断は過去の判断から続いてきていて、明日もその判断の連続が続きます。生まれ変わったように判断の連続が断絶することはありません。過去の選択の結果が今であって、今の選択が明日を決めています。そう考えたら、緊張感は常にもてます。

※1 あえて約束しているルールがあり、それは「”お金”, “人員”, “失敗” については必ず相談・報告する」ことです。シンプルですが、ビジネスで判断を迫られる際に必ず出てくる要素です。