書評: 「かんたんRuby」は公式ドキュメントを読む力を養えるプログラミング学習本

書評: 「かんたんRuby」は公式ドキュメントを読む力を養えるプログラミング学習本

このたび、すがさん(@sugamasao)が執筆した「かんたんRuby」(以下、本書)のレビュワーを務めさせていただきました。取り急ぎ電子版で献本いただきましたので、ご紹介と感想を「学校でプログラミングを学んだ人が現場で使うときにおすすめ」「公式ドキュメントを読み解く力を養う」そして「レビュー後日談」の3部にまとめてご紹介します。

学校でプログラミングを学んだ人が仕事で使うときにおすすめ

いわゆるプログラミング入門書といいましても、どの程度が入門なのか、実際に入門書を買われたことがある方なら悩んだことがあるはずです。私見ですが、「コンピュータは触れるけどプログラミングは全く知らない」から「学校で学んだけれどもソフトウェア開発現場で活躍するにはまだ鍛錬が必要」なレベル、そして「すでに他のプログラミング言語は開発現場で自由に使っているが別の言語を覚える動機があった」人まで、ばらつきがあります。

本書は、その中で「学校で何かしらプログラミングを学んだ人が開発現場で活躍することを目標にする」レベルの方におすすめします。それはなぜかと申しますと、3つあります。

  1. 開発現場で必要とされる言語仕様が広く解説されている
  2. サンプルコードが充実しており写経(書き写して実行)しながら理解できる
  3. 「公式ドキュメント」を読み解く力を養う配慮がある

1は、大学でプログラミングを学習すると、計算機科学に軸足を置いて学習することが少なくありません(これは貴重な学びであり、かつそこで何を学んでいたかにもよります)。確かにコードは書けるかもしれませんが、実際に現場で使うものとはやや違うものを学ぶことになります。例えば、大学ですとアルゴリズムや言語処理系そのものにフォーカスされることがあります。しかし、本書ですとそのような説明はあまりなく、例外やファイルパスに関する処理など開発現場で欠くことのできない知識を学ぶことができます。そして、これらの知識はRubyというプログラミング言語の枠を超えて、他の言語でも役に立つ知識です。

2は、irbコマンドを使ってどんどん入力することで、言語仕様を学ぶことができます。手を動かして実感を掴むことは理解を進めるに当たり大切なことだと僕は考えます。また、これは他のプログラミング言語からRubyに移った人が、挙動を理解するためにも非常に役に立ちます。事実、Rubyを開発現場で使ったことがない僕が非常に役に立ちました。

3は、後述します。ものすごく大切なことなので。

なお、Rubyの言語仕様は既に理解した上で「Ruby on Rails」を学びたい方や、そもそも「プログラミング言語とはなんぞや」という方は、対象ではないかもしれません。

公式ドキュメントを読み解く力を養う

たった今書こうとしているプログラミング言語を深く理解しようとするとき、そして新しいプログラミング言語を学ぶとき、公式ドキュメントは無くてはならないものです。私の先輩や同僚も口々に、公式ドキュメントは大切、そしてよく読もうといいますし、私自身もそうしています。

しかし、初めて現場に立つ・これから立とうとしているソフトウェアエンジニアの方が、公式ドキュメントをしっかり読む力があるかというと、全員ではないと思います。しかも、その知識は先輩から教わる機会を持てないことは多いです。そんな方に、公式ドキュメントを読む力を養うためにも、本書をおすすめします。

というのも、だいたい公式ドキュメントを読み進めるとき、少なくとも僕は本書の目次の流れで読み進めるのではないかと思います。そして、本書は公式ドキュメントへのポインタが示されており、本書の内容をさらに理解を深める時にきちんと公式ドキュメントを読むことができます。こういった「癖」を身に着け、Rubyばかりでなく、他の言語・これから生み出される言語をより深く・すばやく学ぶための力を養うことができるのが本書の最大の特徴です。

すがさん自身も、ご自身のブログ「かんたんRubyという書籍を執筆しました(6/21発売) – すがブロ」で、その点は深く考慮されていることを述べられています。

このような文章を読むことで、わからないことがあったらまずはリファレンスマニュアルを見れば良いんだな、という体験をしてもらいたいという狙いがあります。

レビュー後日談

今年のゴールデンウィーク前にすがさんとサシで夕飯を食べているときに、ほんのレビューを頼まれたのがきっかけでした。それも、他の言語は使っているがRubyはあまり使ったことがない人に読んでもらいたい、という人選でした。それなら、と思いつつ、しかし、スケジュールは2週間と言われて「まじかー」という状況。ガッツリ短時間で集中してレビューさせていただきました。

すがさんも言われていますが、単著を書くのは結構孤独でして、私も以前に書いていたときにその感覚に襲われましたので、刊行にこぎつけられるよう具体的な応援をする気持ちでレビューしてみました。僕が指摘していたのは「これどこかで言及されてる?」「これ想定読者が理解できそう?」や「リファレンスある?」などでした。言語仕様はもうひとりのレビュワーである @willnet さんが積極的に指摘されていたので、役割分担ができていたのかもな、と思いました。

おわりに

ここまで、Rubyの入門書「かんたんRuby」について、「学校でプログラミングを学んだ人が現場で使うときにおすすめ」「公式ドキュメントを読み解く力を養う」そして「レビュー後日談」の3部に分けて説明しました。ソフトウェアエンジニアとして羽ばたく人に向けて、ドキュメントを読解する方法と力、そして現場で必要な言語仕様を理解するためによい本であることをご紹介しました。

本書は、電子版・紙媒体、どちらでも購入可能です。著者ではないんですけど、ぜひお手にとってご覧いただけましたら幸いです。

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