今日もいくつか本をご紹介したいと思います。

まず一冊目は、昨今切っても切れないお話をアカデミックな視点でまとめられている本をご紹介します。

ソーシャル・キャピタル―社会構造と行為の理論

私自身、『ソーシャルキャピタル』(=社会関係資本)と言う言葉を知ったのは昨年の4月(『産学・伝統・そして…ご縁』に詳しく残しています)。そして現在、mixiに始まる人のつながりを活かしたWebサービスが雨後のたけのこのようにリリースされています。
しかし、人のつながりの価値とは一体何者なのでしょうか。体系的に語れる人はいるのでしょうか。ましてや、ソーシャルグラフ(いわゆる「友達一覧」)を最大限に引き出すWebサービスは現在存在しているのでしょうか。
そんなことを、様々な研究を基にして現在わかる範囲で体系化されたのが、こちらの本です。

一部をご紹介します。

社会関係資本への見返り
命題1: 社会関係資本と行為の成功とのあいだには、正の関連がある。
命題2: 初期の地位がよいほど、行為者はよりよい社会関係資本を獲得しやすく、またそれを用いやすい。
命題3: 紐帯が強いほど、社会関係資本は表出的行為を成立させやすくなる。
命題4: 紐帯が弱いほど、道具的行為にとってよい社会関係資本へのアクセスがしやすくなる。
命題5: ネットワークにおけるブリッジの近くにいる個人ほど、道具的行為にとって有効な社会関係資本へとアクセスしやすい。
命題6: 道具的行為にとって、位置の強み(ブリッジへの近接性)はブリッジでつながれる集団間の保有資源の違いにより変わってくる。
命題7: ネットワーキング(紐帯あるいは位置)の効果は、行為者がヒエラルキーの頂上付近にいるか、底辺付近にいるかと言ったヒエラルキー構造により制約される。

第I部 理論と研究 P.78?P.97 より一部引用

内容をぱっと見ると、書かれ方がアカデミック(かつ言葉の定義も理解する必要がある)なのでちょっととっつきにくいです。ただ、それに関する記述を読み解くことで、これが現実、そしてソーシャルWebサービスで実際に起こっている話と徐々に、そしてそれが強烈に脳の中で結びついていくのがわかります。
この本ですが、最初はまとめのところを読んで「何を話しているか」をまず理解し、その後でじっくりかつ何回か本文を読み解いていくとよいかと思います。
Webサービス開発を行っている方々に、ぜひオススメしたい本です。

続きましては、宗教的ですが宗教ではないお話です。

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)

村上春樹さんのノンフィクション。『アンダーグラウンド』の対極にある本です。対極とは、すなわちオウム真理教に所属していた人々を取材した本なのです。なぜ、オウム真理教に入信したのか、取材時点では何をしているのか…。ニュースではあまり取り上げられなかった内容がまとまっている本です。

最後の章にとても引き込まれた話がありました。

河合: (中略)、「何か変だ」というのは、箱の中に入ると、「これはカルマだ」ということで全部きれいに説明がついてしまうわけです。
村上: 全部きれいに説明がつくというのが、この人たちにとっては大事なんですね。

「悪」を抱えて生きる P.303 より一部引用

村上: だからオウムの人たちに「飛び出して一人で自由にやりなさい」と言っても、ほとんどの人はそれに耐えきれないんじゃないかという印象を持ちました。みんな多かれ少なかれ「指示待ち」状態なんです。どっかから指示が来るのを待っている。指示がないというのは「自由な状態」ではなくて、彼らにとってはあくまで暫定的な状態なんです。

「悪」を抱えて生きる P.319 より一部引用

企業には、大きく分けて「組織力」で成り立っている会社と、「トップ」で成り立っている会社があります。
いや、全部が全部組織力だろうと思っている人がいるかもしれませんが、それとはちょっと話が違います。例えば、トヨタ自動車のように社長が変わっても経営方針が安定している会社を前者、アップルのようにとてつもなく強いキャラクタが経営を左右する会社を後者としてイメージしてみてください。

僕は20代前半を後者に属する会社にいました。そのときは、自分自身で考えて行動している、そう思っていました。しかし今振り返ると、それは違ったのです。社長の大方針に「従って」…それは、自分自身で持っておくだろうポリシーなどを持たずに、社長の方針を全て基準に行動してきたのです。たとえ、世間一般から見て違和感(反社会的行為とかではありません)があった事柄でも、社長が説明して私が納得していれば、取り組んだと言うわけです。

だから、今とても苦労しています。自分自身で、方針を立てて行動することがとても難しい。最後は理論、言い換えれば理屈では解決できないことが山のようにあるのにも関わらず、一般論や事例などで判断してしまう自分がいました。言い換えれば、自分自身の『判断軸』がなかったのです。

僕は、早く結果を求めすぎてきたのかもしれません。

話がカタくなりましたけど、僕がとても惹かれた2冊をご紹介しました。

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